自民党総裁選(2024年9月12日告示、27日投開票)への出馬を表明している河野太郎デジタル相が9月9日に東京・丸の内の日本外国特派員協会で開いた記者会見で、記者からの質問に、いらだちをあらわにする場面があった。
河野氏の父親、河野洋平氏が官房長官だった1993年に、慰安婦問題に関連して出した、いわゆる「河野談話」をめぐる質問だ。首相になった際は河野談話に言及するか問われると、「ジャーナリストがいまだにそのようなことを言うことに非常に驚いている」などと不快感を示した。
元慰安婦の女性に「心からお詫びと反省の気持ち」を表明した河野談話
河野氏は1時間強にわたって英語で会見、冒頭20分ほど、安全保障の問題を中心に持論を展開した。その後、質問を受ける中で河野談話に関する質問が出た。次のような内容だ。
「あなたが首相になった場合、1993年の慰安婦に関する談話で、あなたの父親が述べたような、戦時中についての『深い反省』や『心からのお詫び』に言及するつもりはあるか」
河野談話では、慰安所の設置や管理について「旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与」したとして、元慰安婦の女性に「心からお詫びと反省の気持ち」を表明している。なお、質問に登場した「深い反省」というキーワードが盛り込まれたのは、戦後50年の95年に出された、いわゆる「村山談話」だ。
河野氏は「いまだに」(still)という単語を2回も使って応答。河野談話をめぐる質問が出ることへのいら立ちを隠さなかった。
「ジャーナリストがいまだにそのようなことを言うことに非常に驚いている。あの談話は内閣の談話であって、個人としての談話ではないし、何年にもわたって語られてきたことなのに、いまだにジャーナリストがそのようなことを言っている。非常に驚いた」
歴代内閣が継承、見直さない方針を国会答弁
河野談話をめぐっては、岸田内閣を含む歴代内閣が継承しており、見直さない方針を国会で答弁している。仮に「河野内閣」が成立した場合、河野談話を引き継ぐか否かが質問の趣旨だったとみられるが、河野氏はこの点には直接答えていない。
河野談話をめぐる問題は、河野氏にとっても頻出質問だった可能性がある。河野氏が「ネット上のデマについて」と題して22年末にウェブサイトに掲載した項目では、
「父親に対して、河野談話の取り消しを迫らないのは、親中だからだ」
という声があるとして、次のように説明している。
「俗に河野談話と呼ばれる官房長官談話は、発言者の個人的なものではなく、内閣の見解ですから、取り消すことができるのは内閣だけです。内閣の見解は、発言者といえども、個人的に取り消すことはできません。誰かが発言を取り消す、取り消しを迫るという個人的なことではなく、内閣がその立場、見解を変えるかどうかという問題です」
(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)