「いいね押すだけ」ポチポチ気軽に稼ぐはずが...100万円被害 スキマ時間の副業、詐欺師横行に注意

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   「『いいね』を押すだけ」「スタンプを送るだけ」。こんなスキマ時間を使って簡単に稼ぐ副業に応募したら、100万円もとられたという詐欺被害が急増している。

   国民生活センターが2024年9月4日、「スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル!簡単なタスクを行う副業でお金を払う??詐欺に騙されないで」という警鐘を鳴らす報告を発表した。

   いったい、どんな手口か。騙されない方法を調査担当者に聞いた。

  • スキマ時間副業詐欺に注意(写真はイメージ)
    スキマ時間副業詐欺に注意(写真はイメージ)
  • (図表1)スキマ時間副業に関するトラブルの相談件数(国民生活センター作成)
    (図表1)スキマ時間副業に関するトラブルの相談件数(国民生活センター作成)
  • (図表2)スキマ時間副業詐欺の手口(国民生活センター作成)
    (図表2)スキマ時間副業詐欺の手口(国民生活センター作成)
  • スキマ時間副業詐欺に注意(写真はイメージ)
  • (図表1)スキマ時間副業に関するトラブルの相談件数(国民生活センター作成)
  • (図表2)スキマ時間副業詐欺の手口(国民生活センター作成)

「あなたのミスで損をした。処理費用に15万円支払え」

   国民生活センターによると、スキマ時間副業の相談件数と平均相談額は2020年度に1341件(約28万円)から2023年度に3694件(約76万円)と、件数・相談額ともに約3倍に増えている。2024年度(7月末時点)は950件(約106万円)と、相談額が100万円を突破した【図表1】。

   相談者の約8割が女性で、男性の4倍に達している。こんな相談事例が代表的だ【図表2】。

【事例1】チームでタスクをすることになったが、ミスでチーム全員が損をしたと言われ、処理費用を支払わされた

   子育てしながらできる副業を探した。SNSで「動画SNSを見るだけで報酬を得られる」という広告を見てメッセージアプリ経由で申し込んだ。

   相手方の名前や連絡先はわからない。指示通りにタスクをこなし数百円を受け取った時点で「高額報酬のタスク(作業)がある」と誘われ、指示されたアプリに登録し、指示された1万円を支払った。

   4人1組でチームになり、全員同じデータを入力すると、事前に支払った1万円に報酬を上乗せした1万数千円が振り込まれた。次に3万円を振り込み、データを入力した後で「あなたのミスでチーム全員が損をした」と言われた。その処理費用に15万円が必要と言われ、口座に振り込んだ。

   さらに「次のタスク完了でお金が戻ってくるから」と言われて約40万円を口座に振り込んだ。タスクは完了したが報酬を引き出すためにはさらに約70万円が必要と言われ、おかしいと気づいた。報酬を得るためと言われ、生活費をすべて振り込んでしまった。(2024年5月・30歳代女性)

【事例2】高額報酬のタスクのため、指示に従って事前に振り込みをしたが、引き出すことができない

   SNSの副業広告を見て、個人の女性とメッセージアプリで繋がった。

   「動画サイトと連携して映画の観客を増やす仕事で、動画を見ながらスクリーンショットを送信するだけ。1件あたり100円~800円なので、1日5000円~5万円稼ぐことが可能。高額報酬のタスクは事前に送金する必要があるが、送金金額の30%が報酬になる。

   たとえば1万円を送金すれば、タスクを完了させると報酬は3000円となるので、合計1万3000円が入金される」と記載があった。

   高額報酬を得るため、事前に現金を送金した。最初は実際に報酬が引き出せたが、さらに送金したうえでタスクを完了させないと報酬が引き出せないと言われ、合計約10万円を振り込んだ。

   貯まっている報酬約20万円を引き出すために5万円を振り込んだが、出金できず、詐欺にあったと気づいた。(2024年6月・年代不明女性)

副業で稼ぐはずが、お金を取られる3つのケース

【事例3】報酬を出金しようとしたらアカウントが凍結され、高額な解除費用を請求された

   「1分で稼げる副業」というSNS広告が目に留まった。広告には「SNS広告を送信するので、広告に『いいね』するだけ。『いいね』の数を上昇させてフォロワー数を多くするのが目的。1案件100円から800円、月3万円から5万円は稼げる」「ユーザー登録するだけで1500円が貰え2000円以上貯まると出金もできる」と書かれていた。

   自分にもできると思い、メッセージアプリで友だち登録した。自動でメッセージが消えるアプリをダウンロードするよう言われ、そのアプリに広告が送信されてきたので「いいね」した。

   数十分に1回間隔で広告がくるので、そのつど作業をし、出金するには3000円を振り込む必要があると言われたので個人口座に振り込むと、報酬分も含めて4000円が振り込まれた。

   その後、合計20万円を振り込んだ。貯まっていた報酬を出金しようとしたらアカウントが凍結された。アカウントの凍結解除のために40万円振り込むよう言われた。(2024年1月・30歳代女性)

   国民生活センターによると、この手口の特徴は、お金を稼ぐために副業を行なっているはずなのに、さまざまな理由をつけて金銭を請求され、その金銭が戻ってこないこと。おもな理由は次の3つだ【図表2】。

(1)「高額報酬のタスクは事前に送金が必要」などと、タスク実行前に振り込みをさせるパターン。

(2)「ミスをしたために処理費が必要」などと、タスク実行後に振り込みをさせるパターン。

(3)「報酬を引き出すためには費用がかかる」などと、報酬を得る段階で振り込みをさせるパターン。

   どうして簡単にだまされてしまうのだろうか。

子育て中のママの写真で安心させる手口

   J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した国民生活センター相談情報部の小谷野武瑠(こやの・たける)さんに話を聞いた。

――なぜ、ここ数年、スキマ時間副業の詐欺が急増しているのでしょうか。

小谷野さん まず、スキマ時間に稼ぎたいというニーズが増えていることがあげられます。

また、SNSが発達して利用する人が増えているうえ、Webマーケティング技術が発達したから、「副業したい」とか「ちょっと空いた時間に」などと検索すると、関連のスキマ時間副業広告が上位に表れてくるようになりました。

その中に、詐欺広告があり、目につきやすくなっています。興味を引かれてクリックすると罠にはまる仕掛けです。

――なるほど。しかし、女性が男性の4倍も被害に遭う人が多いのはなぜでしょうか。

小谷野さん 子育てをしながら、少しでも家計の足しにと、在宅の空いている時間に副業で稼ぎたい母親が多いからでしょう。先ほど述べたように「在宅」「副業」などと検索すると、詐欺広告が上位に表れます。

しかも、広告の目立つところやメッセージアカウントに、子育て中のママさんの写真が写っているケースが多いのです。そして、「20代~30代女性の間で話題沸騰!」「スキマ時間にピッタリ、スタンプ送ればOK」などと、若いママさんの興味をそそるうたい文句で誘います。

サクラを使って、脅しあげる

――手が込んでいるのですね。しかし、副業で稼ぐはずなのに、自分から多額のお金を振り込まないといけないなんて、おかしいとは思わないのでしょうか。

小谷野さん 最初は、実際に「いいね」を押したり、スクショ(スクリーンショット)を送ったりするだけで報酬が振り込まれます。数百円の小さな額ですが、被害者のQRコードにちゃんと残高を振り込んだりして信用させてから、もっと高額の報酬が得られるタスクに誘い込む手口です。

送金額に応じて報酬はその30%などと、額が増えていく仕組みといわれると、その気になってしまう人が多くなるようです。

――しかし、事例1では4人組でチームになり、ミスをしたからと処理費用を15万円も支払わされました。本当にチームでタスクをやったのでしょうか。おかしいと思わないのが不思議です。

小谷野さん チームなんかではやってはいないはずです。しかし、同じチームのメンバーを名乗る者から「あなたのミスのおかげで、私も損害をこうむった」とか「私も以前ミスを犯した時は、ちゃんと処理費を支払った」などいうメールがきたりします。

サクラであることは間違いありませんが、プレッシャーを感じて支払ってしまうケースが多いようです。

――本当に悪らつな手口ですね。こういう詐欺に遭わないようにするには何が一番大切でしょうか。

小谷野さん 世の中に簡単にもうかることなどありません。「『いいね』を押すだけ」「コピペするだけ」「スクショを撮るだけ」「動画を見るだけ」で、「簡単に稼げる」「もうかる」ことを強調する広告は、詐欺の可能性が高いです。絶対に鵜呑みしてはいけません。

また、相手から住所や氏名、銀行口座などの情報の開示を求められる場合があります。悪用される可能性がありますから、相手がだれかよくわからない場合は、個人情報の提供はやめましょう。

高額報酬を得るためと称して、お金の振り込みを求められるケースが目立ちます。これはもう詐欺ですから、お金は戻ってきません。最寄りの消費生活センター、ホットライン「188」(いやや!)に相談してください。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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