ある調査によると、2020年以降に新卒入社した若手社員が「おすすめできる」と評価した企業ランキングで、電通総研がトップになったという。
回答者からは「29歳、残業0時間で年収1,000万超え。仕事を頑張ればボーナスは1.4~2倍になる。とても恵まれている」といった女性社員の声が寄せられている。いったいどんな会社なのだろうか。
2024年に電通国際情報サービスから商号変更
この調査は、大手口コミサイトのOpenWorkによるものだ。
「あなたはこの企業に就職・転職することを親しい友人や家族にどの程度すすめたいと思いますか?」という質問への回答を、2020年以降に新卒入社した社員に限定して集計し、ランキングを作成した。
2位は中外製薬、3位以下には住友商事、三井物産、ソニー、アマゾン ウェブ サービス(AWS)ジャパン、ディー・エヌ・エーなどが続いている。
有名企業が並ぶ中、電通総研の知名度は一段落ちるようにも感じられ、意外性がある。それもグループ中核会社である大手広告代理店の電通(ランキング10位)を差し置いての1位だ。
この会社について、経済ライターのAさんは次のように説明する。
「電通総研は、電通国際情報サービスという名前のSIer(システムインテグレーター)だったんですが、2024年1月に電通総研に商号変更したんです。社名が変わったことで人気が上昇するのではと言われていたんですが、実際に働く人の満足度はすでに高いようですね」
沿革をさかのぼると、1975年に電通と米ジェネラル・エレクトリックとの合弁会社として誕生。2025年には創立50周年を迎える。
業界内では「ISID」の略称で呼ばれていたが、商号変更とともに、子会社のISIDビジネスコンサルティングとアイティアイディを統合し、グループ内のシンクタンク機能を移管している。
「電通グループの中では、電通や電通デジタルと並ぶ中核子会社、という表現が使われることがあるようですが、まだまだ規模は小さいですね。ただ、電通や電通デジタルのクライアントが、デジタルマーケティングやDXの案件を発注するうえで、IT専門の会社があることは頼もしいのではないでしょうか」
2030年までに「現在の2倍以上の売上高」目指す
電通総研とは、業界内ではどういうポジションなのだろうか。
「いわゆるSI業界では15~20位程度の準大手で、2023年12月期の連結売上高は1426億円。同じく社名に総研を掲げる三菱総合研究所の1221億円を少し上回っているポジションですかね」
近年は独SAPのソリューションの導入による基幹システムの刷新案件が業績を牽引しているが、コンサルティングサービスや受託システム開発のほか、独自のソフトウェア製品も持っているという。
「製造業向けの"開発の見える化ソフトウェア"である『iQUAVIS(アイクアビス)』や、連結会計・決算システムの『STRAVIS(ストラビス)』といったソリューションは、業界内でも存在感のある製品になっているようです」
将来性はどうなのだろうか。Aさんによると、中期経営計画ではかなり高い目標を掲げているという。
「2022年に発表された『Vision 2030』には、"2030年のありたき姿"として売上高3000億円規模の企業グループを目指すとしています。現状の2倍以上ですね。公開情報だけでは達成の道筋が見えているとはいえないのですが、仮にこれが実現するとした場合、いま入社すると成長企業の雰囲気を味わえるかもしれません」
2023年12月期の電通総研グループの連結従業員数は3652人、本体単体の従業員は2039人。平均年齢は40.6歳で、平均年間給与は、1133.7万円だ。
Aさんは「電通グループという安定基盤の上で、成長の勢いが今後加速していくのではないか。これからM&Aとあわせてエンジニアの大量採用を行う必要があるはず。若手のエンジニアのキャリア入社は、かなり歓迎されるのでは」と予想する。