増税ゼロ、金融所得課税の強化、選択的夫婦別姓に賛成......。2024年9月12日告示、27日投開票の自民党総裁選で、各候補が大胆な政策を打ち出し、それに反論する候補が出て、異例の論争が繰り広げられている。
これまでの総裁選では、あいまいな政策で各候補の違いがはっきりしなかったが、今回は、なぜ争点が次々に出てきたのだろうか。その背景について、政治アナリストに分析してもらった。
増税ゼロ、金融所得課税の強化、選択的夫婦別姓などで違いが鮮明に
「増税ゼロの政策推進を実行していく」。自民党の茂木敏充幹事長(68)は9月4日、総裁選への出馬表明を行い、会見でこう明確に言い切った。
茂木氏は、防衛増税、子育て支援金の保険料負担増の政策を打ち出した岸田文雄首相を幹事長として支えてきたが、この2つについて、「それぞれ1兆円分を停止する」と会見で明らかにした。明らかに岸田路線を否定するもので、岸田首相は驚きを隠さなかったと報じられている。
一方、総裁選への出馬を表明した岸田派出身の林芳正官房長官(63)は、この日の会見で茂木氏の発言にはコメントしなかったが、防衛増税などは必要なものだと強調した。
党内で11人が総裁選に意欲を見せ、混戦模様とされた中で、2日には、金融所得課税を巡っても、政策論争が巻き起こった。
出馬表明した石破茂元幹事長(67)は、BS日テレの報道番組に出演し、金融所得課税の強化について「それは実行したい」と述べ、波紋が広がった。6日に出馬会見する予定の小泉進次郎元環境相(43)は、「貯蓄から投資の流れに水を差す」と記者団の質問に難色を示し、他の候補も疑問視したと報じられた。
自民党の裏金問題については、出馬表明した河野太郎デジタル相(61)は、関わった議員に返還を求めると発言して、党内でも議論になったと報じられた。また、選択的夫婦別姓についても、各候補の発言が続き、賛否が割れている。
総裁選を前に、政策論争がにわかに活発化してきたのは、一体なぜなのだろうか。
「7~8人の出馬が予想され、特色を出さないといけなくなった」
この点について、政治アナリストの伊藤惇夫さんは9月5日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように話した。
「これまでは、派閥の足し算、引き算が行われ、活発な政策論争はありませんでした。しかし、総裁選に7~8人の出馬が予想される状況になって、各候補がそれぞれ特色を出さないといけなくなっています」
その背景には、総裁選では、解散・総選挙などを見据えて、国民に人気のある候補が選ばれるという事情があるとみる。
「岸田さんは、国民に不人気で選挙を戦えないという党内の包囲網で出馬できませんでした。各候補が国民にアピールして、その中で人気のある人を選ぶ総裁選になっています。各候補は、経済政策や裏金問題で特徴を出して支持を受ける狙いがあり、政策面で差別化しないといけなくなりました」
また、国会議員票と同数の党員票があり、一般の党員の人たちの関心を引かないといけないこともあるという。
「これだけの人数がいると票がばらけますので、過半数を得る候補はなく、上位2人の決選投票になる可能性は高いと思います。各候補は、その中で生き残らないといけません。他の候補との差別化も進んで、裏金議員を公認するかどうかも争点になっていますね」
裏金議員への対応が分かれるのは、強く出ることが諸刃の剣になるからだという。
「厳しくすると議員から反発が出て票が減りますし、緩くすると党員票が入りません。思い切って党員票に頼るか、できる限り議員に配慮するか、どちらかに分かれるでしょう」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)