伊藤忠商事が大幅な給与改定を行い、業界トップ水準の給与を支給する――。こうした内容の文書が、2024年9月3日頃からXで拡散されている。プレスリリースは出されておらず、社内向けの文書とみられるが、この内容は事実なのか。
担当者級でも年収2500万円
文書は複数のXアカウントで拡散されており、タイトルに「年収水準見直しについて」、最後に「岡藤正広」とある。代表取締役会長CEOの岡藤正広氏だ。これによると、「来期以降の処遇を大きく改善し財閥系商社に負けない水準の制度に改訂する」としている。三井物産と三菱商事を念頭に置いた「財閥系商社」が資源価格高騰で好業績となり、給与水準が上がり、伊藤忠商事との給与水準差が目立つようになったことが背景にあるという。具体的には、(1)自社株を通じた株式報奨の拡大、(2)固定給の引き上げ(ベースアップ)、(3)力を発揮する社員には変動給にて業界トップの報酬を支給――をするという。
24年度の利益目標を達成した場合の25年度の年収は、24年度比の総平均で10パーセントの上昇を予定しているという。さらに、役職別の成績優秀者の年収水準も掲載されている。例えば利益目標を達成した場合、「GRADE3」と呼ばれる担当者級でも現行だと年収2200万円のところ、改定後は2500万円になるといい、「日本経済界でも突出した高給となります」とうたっている。
社内向けの文書の拡散については「大変遺憾」
4日に取材に応じた伊藤忠商事広報部の担当者によると、この内容は「事実です」という。しかし、現在処遇について「労働組合と交渉中のため、回答を差し控えさせていただきます」とした。現在のところプレスリリースの予定もないという。
また、社内向けの文書がXで拡散されたことについては問題視しており、「大変遺憾だと思っております」と話した。
伊藤忠商事の有価証券報告書によると、24年3月末現在で従業員数は4098人。平均年齢42.3歳、平均年間給与は1753万6469円だ。