世の中には想像以上にネガティブアプローチでやる気を削いでくる人がいます。
相手のやる気が削がれれば、それで十分。自分の立場が自動的にあがるくらいに考えているのかもしれません。そんなネガティブアプローチの人がよく口にする発言の対策を幾つか紹介したいと思います。
「ほかの人はどうかな」婉曲に反対を表現する人は押しが強くない――そこを攻める
「私はいいと思うけど、ほかの人はどうかな」
これは答えとしては、「よくない」ということを主張しています。総論賛成・各論反対という言葉のとおり、個人として本当はノーなのです。
かといって、「反対です」と言い切ることはできず、自分なりに婉曲に主張しているのです。「ノーって旗を振ってんだけど、ちょっとわかってくれるかな」、ぐらいの感じでしょうか。
このような曖昧で婉曲な表現をした一言で、残念ながらモチベーションが下がってしまう人はたくさんいます。
そもそも、こうした発言をする人は押しの強い人ではありません。「イエスかノーか」と問われたときに、「比較的イエス」と言ったり「黒に近い白です」と言ったり、余韻とか逃げ道を作っておきたいのです。
そのため「イエスなんですか、ノーなんですか」と尋ねても切れ味のある答えは返ってきません。
こうした発言をする人にどう対応するべきなのでしょうか?
「ノーでいいんですね」ハッキリ白黒つけて言ってあげる
まずは、「わかりました。ノーでいいんですね」と言ってあげましょう。つまり、余韻を残さないほうがいい。いざとなったときに、「ノーという判断をもらった」というエビデンスになるように整理を加えるのです。
そもそもなんでモチベーション下がるかというと「どっちなのか」と感じる曖昧な発言に振り回されてやる気がなくなるのです。だとしたら、
「わかりました。じゃあもうノーというふうに理解したんで、その方向で考えましょう」
と言い切ってみるのです。
すると「いや、そういうことじゃなくて俺は賛成なんだ」とか言い出すことでしょう。そういうときは「では賛成ということで、受け取りました」と断言することでモチベーションは下がらないのではないでしょうか?
何ごとも理解度が高まるとすっきりし、モチベーションは下がりづらくなります。いわゆるクローズクエスチョンです。はっきりとした答えを返すことが大事です。
「前例がない」との発言にはいったん認めて「だからこそやりましょう」
「前例がない」
そもそも今の時代において、前例に基づいてやっていくということは大きな成功につながりにくいものです。
二番煎じと見られることもあり、大体競合に負けていくのが常です。プライスリーダーになれる人とは、古い言葉で言うと、ブルーオーシャンに入っていける人でもあります。
そもそも前例がないと反対しているのはどうしてなのでしょうか? その人が、役割意識として反対してる場合もあります。「会社として慎重に考えなさい」という意味合いで、象徴的な「前例がない」というネガティブな発言をした可能性もあります。
「前例がない」と言われたときに大切なことは、「だからやるんじゃないですか、普通」ということを相手にさらっと返すことなのです。
ここで、「前例があればやるのですね?」と揚げ足取りのように言質を取って「これは前例じゃないでしょうか」と無理やり前例らしきものを探しにいく方法もありますが、それよりはポジティブな印象を持たせながらすすめる方法をお奨めします。
まず、反対意見を言わなければいけないその人を立ててあげるのが効果的です。「その発言はごもっともです」と受け止めつつ、「だからこそやりましょう」って言いきってみてはどうでしょうか?
たいていの会社は「挑戦」を理念として掲げている――そこを逆手に取ろう
先にも書いたように、反対意見は会社を代表するものではなく慎重に検討するための楔のようなものとしての発言であるケースがあります。
その楔を乗り越えて、やるべき強い意志があるのであればやるということです。1つひとつの発言をまともに受け止めて、モチベーションを下げてしまうのは大いにもったいない。自分の意思をつらぬく発言で阻止してみてはどうでしょうか?
ちなみに大抵の会社では、理念や方針として、挑戦や新しいことに取り組む意欲が掲げられています。そうした会社のモットーを確認しておいて、「社長が『うちの会社は新しいことにあくなき挑戦をしてきた』と語られていまよね」といったように、反対意見に負けない方法も覚えておいてください。
【筆者プロフィール】
高城 幸司(たかぎ・こうじ):株式会社セレブレイン代表取締役社長。1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。