入社4年目から研修は命令ではなく、社員がメニューから自ら選ぶ
浜野さん 新卒から3年目程度までは、全員が必修の研修を受ける形でよいですが、今後は4年目以降の研修は全て任意にしたいと考えています。
会社側でメニューはつくるけれど、何をどう選ぶかは本人に自由に選択してもらう。スキル向上やチーフになるまでの必要な研修は用意するけれど、学ぶか否かは本人が決める。本部や上司から言われたからと、誰かにやらされて研修を受ける必要はない。やる気のある人が、自己責任で選び学んでいけるようにしていきたいのです。
全員に無理に学ばせる必要はないと考えています。やる気にさせることに労力を割くより、やる気と熱意のある人に100%コミットし、サポートしたいと思っています。
前川 自律性や主体性ある人材の育成に向けて、理に適っていますね。現在の私は人材育成支援のFeelWorksを営んでいますが、昭和から平成に変わる時代に新卒でリクルートに入社しました。
入社から若手社員のころは、リクルート事件のさなかで、バブル崩壊もあって会社が潰れるほどの負債を抱えていました。社員の各種手当や福利厚生はほとんどなくなりましたが、一方で当時の経営陣が新設したのがコーポレート・ユニバーシティでした。
学ぶメニューを整え、やる気のある者に自律的に学ぶ機会を与えることが、組織の危機と再生に欠かせないと考えたのでしょう。
そもそも「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」が社訓のような企業風土でしたから、プロフィット・センター制を導入して独立採算の現場組織を作り出して、20代の若手マネジャーに各チームの経営を任せてきたことも、人が育つ源泉だったと思います。私が経営者になる素地を作ってくれたリクルートには感謝しかありません。現場社員に権限移譲を徹底する、OICグループさんと相通ずる部分が多いと思いながらお聴きしていました。
また、長年人材育成のプロとして多数の企業を支援し、先進企業も見てきて確信になりつつあるのは、人を活かす経営とは、最後は権限移譲、任せることに行きつくということです。
日本企業のルーツを遡れば、前川製作所の「独法経営」や京セラの「アメーバ経営」も同じで、人を育て活かすために、各現場を独立採算制とし、責任と権限をセットで任せてきたわけです。
浜野さん それが大事ですね。反対に、現場に責任だけを押し付ける企業も少なくないですから。
前川 最近は「管理職は罰ゲーム」と言われる切ない風潮がありますが、これは、現場管理職に対して責任は求めるものの裁量が少ないことが原因です。
だから、若者は昇進をコスパが悪いと避けるようになっているのです。私はOICグループさんのように現場管理職に裁量と責任をセットで権限移譲をする企業が増え、活き活き働く上司を日本中に増やしたい。そんな上司たちが若者たちの憧れの存在となり、キャリアの希望を膨らませていく。そんな社会を創りたいと考えています。