トランプ氏は富裕層、ハリス氏は中間層にアピール
J‐CASTニュースBiz編集部は、リポートをまとめた前田和馬さんに話を聞いた。
――ハリス氏とトランプ氏の経済政策は、ズバリどこが大きく違うでしょうか。
前田和馬さん 一番大きな違いは税制です。まず、トランプ氏は第1次政権で成立したいわゆる「トランプ減税」を延長する方針です。これは富裕層向けの所得税や贈与税の優遇措置ですが、2025年末に期限を迎えます。これを恒久化すると言っています。
それに加えて、広範囲に大幅な減税を行なうと主張しています。低所得者層や高齢者への減税、さらにチップ収入の非課税化も強調して、飲食や宿泊などの接客業に従事するマイノリティーへの支持拡大を狙っています。
そして、企業向けには法人税率を21%から15%ほどに下げると訴えています。
――そんなバラマキ政策で、財源の裏付けは大丈夫なのでしょうか。
前田和馬さん 本人は関税収入で賄うと主張していますが、それだけでは足りません。米国では議会が予算法案を作り決定しますから、実現できるかどうかは不確実です。有権者へのアピールという意味で、ポピュリズム的といえます。
ただ、仮に実現したとしても、全体的には富裕層の方がメリットは大きいでしょう。トランプ減税の延長は年収が45万ドル以上、日本円にして約6500万円を超える層が約半分の恩恵を受けると言われています。
11月は大統領選と同時に議会選も実施されます。仮に、上下院の第一党が異なるねじれ議会となる場合、民主党はこうした富裕層への支援に反対し、法案の成立を阻止するでしょう。
――一方、ハリス氏はどんな税制を打ち出しているのですか。
前田和馬さん ハリス氏は、トランプ氏のバラマキ型に対して、分配色が強いです。
特に、年収が40万ドル以下の層が減税の恩恵を受けられる仕組みを考えています。「中間層の強化が最大の仕事」と民主党大会の指名受諾演説でも訴えましたが、中流労働者層へのアピールを狙っています。
なによりトランプ氏と大きく違うのは、法人税率を21%から28%に引き上げ、これを原資に中間層を手厚く支援する点です。法人税を下げるというトランプ氏の政策は、米国企業や株式市場にとっては受けがよいでしょう。ただ、ハリス氏は労働者層の有権者に強くアピールする必要があります。