台風10号は、非常に強い勢力で九州に接近したが、台風の目が屋久島の高山から影響を受けたため急速に衰えた――ネット上でこんな言説がいくつか投稿され、関心を集めている。
確かに、台風の目は、屋久島を過ぎた付近からぼやけてきたが、本当なのだろうか。台風の急速な減衰について、気象庁の担当者に取材して話を聞いた。
「宮之浦岳さんGJ」「自然地形の抑止力すごい」
台風10号は、925hPaまで発達して九州に上陸すると予測され、過去に甚大な被害をもたらした伊勢湾台風(1959年)などと比較された。
大きな被害も懸念されていたが、上陸前後から急速に衰え、2024年8月30日には、990hPaほどにまで減衰している。9月1日には、熱帯低気圧に変わる見込みだという。
なぜこんな減衰が起きたのか、ネット上で関心を集め、29日ごろから、屋久島の高山に影響を受けたことが原因ではないかとの説が、気象情報のXアカウントなどで唱えられ始めた。
屋久島には、標高1936メートルある九州最高峰の宮之浦岳などいくつかの高山がある。「洋上のアルプス」に例えられ、宮之浦岳は、冬期は3~5メートルの積雪があるとされる。
いくつかの投稿では、台風10号が屋久島を通過するときに、その目が高山に影響されて消えていったとする言説を唱えていた。中には、17年の台風5号についても、屋久島に影響されて減衰したとの指摘もあった。
これらの投稿は、多数の「いいね」が集まり、X上で拡散している。共感の声は多く、「宮之浦岳さんGJ」「自然地形の抑止力すごい」「屋久島が守ってくれた」といった書き込みが相次いでいる。
台風10号が屋久島の高山から影響を受けて減衰したというのは、どこまで本当なのだろうか。
「高気圧から乾燥した空気が流れ込んだのが主な原因」
この点について、気象庁のアジア太平洋気象防災センターの担当者は8月30日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように話した。
「確かに、近くに高い山があると、その影響がなかったとは言えないと思います。しかし、大きな原因については、別のところにあると見ています。大陸にある高気圧の縁に乾燥域があって、台風の北西側からその乾燥した空気が流れ込んでいました。このため、積乱雲の発達が抑えられ、台風は、急速に衰えていったと思われます。こうした空気が台風の中心に入ると、台風が一気に崩れていきます」
台風10号は、いずれ乾燥域の影響を受けると予測していたが、予想より影響が早かったという。
17年の台風5号についても、屋久島の影響がないとは言えないものの、大きな原因は別にあるとみているとした。
「海上をゆっくりと進んだため、長時間にわたって海面がかき混ぜられ、海水温がかなり低下していました。このため、台風は、段々と衰弱していったと考えられます。確かに、屋久島の上を通っていますが、その影響で極端に弱まったとは言えない状況でした」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)