台風10号、屋久島を通ると急速に減衰→「山が守ってくれた」...盛り上がるネット言説、気象庁に見解を聞いた

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   台風10号は、非常に強い勢力で九州に接近したが、台風の目が屋久島の高山から影響を受けたため急速に衰えた――ネット上でこんな言説がいくつか投稿され、関心を集めている。

   確かに、台風の目は、屋久島を過ぎた付近からぼやけてきたが、本当なのだろうか。台風の急速な減衰について、気象庁の担当者に取材して話を聞いた。

  • 宮之浦岳
    宮之浦岳
  • 8月28日5時の衛星画像(気象庁サイトから)
    8月28日5時の衛星画像(気象庁サイトから)
  • 宮之浦岳
  • 8月28日5時の衛星画像(気象庁サイトから)

「宮之浦岳さんGJ」「自然地形の抑止力すごい」

   台風10号は、925hPaまで発達して九州に上陸すると予測され、過去に甚大な被害をもたらした伊勢湾台風(1959年)などと比較された。

   大きな被害も懸念されていたが、上陸前後から急速に衰え、2024年8月30日には、990hPaほどにまで減衰している。9月1日には、熱帯低気圧に変わる見込みだという。

   なぜこんな減衰が起きたのか、ネット上で関心を集め、29日ごろから、屋久島の高山に影響を受けたことが原因ではないかとの説が、気象情報のXアカウントなどで唱えられ始めた。

   屋久島には、標高1936メートルある九州最高峰の宮之浦岳などいくつかの高山がある。「洋上のアルプス」に例えられ、宮之浦岳は、冬期は3~5メートルの積雪があるとされる。

   いくつかの投稿では、台風10号が屋久島を通過するときに、その目が高山に影響されて消えていったとする言説を唱えていた。中には、17年の台風5号についても、屋久島に影響されて減衰したとの指摘もあった。

   これらの投稿は、多数の「いいね」が集まり、X上で拡散している。共感の声は多く、「宮之浦岳さんGJ」「自然地形の抑止力すごい」「屋久島が守ってくれた」といった書き込みが相次いでいる。

   台風10号が屋久島の高山から影響を受けて減衰したというのは、どこまで本当なのだろうか。

「高気圧から乾燥した空気が流れ込んだのが主な原因」

   この点について、気象庁のアジア太平洋気象防災センターの担当者は8月30日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように話した。

「確かに、近くに高い山があると、その影響がなかったとは言えないと思います。しかし、大きな原因については、別のところにあると見ています。大陸にある高気圧の縁に乾燥域があって、台風の北西側からその乾燥した空気が流れ込んでいました。このため、積乱雲の発達が抑えられ、台風は、急速に衰えていったと思われます。こうした空気が台風の中心に入ると、台風が一気に崩れていきます」

   台風10号は、いずれ乾燥域の影響を受けると予測していたが、予想より影響が早かったという。

   17年の台風5号についても、屋久島の影響がないとは言えないものの、大きな原因は別にあるとみているとした。

「海上をゆっくりと進んだため、長時間にわたって海面がかき混ぜられ、海水温がかなり低下していました。このため、台風は、段々と衰弱していったと考えられます。確かに、屋久島の上を通っていますが、その影響で極端に弱まったとは言えない状況でした」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

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