若手の早期離職も、理念やビジョンへの共感がなければ引き留めない
前川 角度を変えて、社員採用に関する方針や課題についてうかがいます。新卒採用者250人に対しキャリア採用者350人という比率はうかがいました。それぞれの特徴を教えてください。
浜野さん まず店舗においてキャリア採用の方は、ほぼ全員が食に関わる前職経験をもとに入社してこられます。
それに対し、新卒採用者は基本的には勤務経験が無いため、フラットな状態から始まります。学歴を問うことはほぼありません。大卒に限らず短大卒、専門学校卒、高卒と幅広く採用してきましたし、出身校を問うこともありません。
もちろん、高卒18歳、大卒22歳という、年齢に応じた初任給に差はあります。しかし、成果に従って職位と給与が上がりますし、チーフ昇格後も学歴や年齢による序列はありません。
前川 特に若者の採用に向けて意識されていることはありますか。昨今、多くの企業が若手の採用難と早期離職に悩んでいますが、御社では困っている状況はありませんか。
浜野さん たしかに新卒採用で困ってはいます。それは弊社が急成長中を遂げており、採用人数を毎年拡大しているからです。
来春には450人の新卒採用を目標としているのですが、マンパワーも不足しておりますので、採用担当者の採用に努めているところです(笑)。私を含め各本部長、事業部長は日々の面接で予定が埋まる程です。しかし、チーフ経営を大切にする弊社ではやはり人がすべてですから、採用には力を尽くしています。
新卒の離職率については、大卒の入社3年後3割程度と、一般的な業界平均値と変わらないと思いますが、配属先でのチーフのマネジメントの拙さや、人間関係の相性の悪さなど「もったいない離職」を防ぎ、比率を下げていきたいとは思っています。ただ、私は離職すべてが悪いとは思っていません。職場や仕事が合わないと思う方を無理に引き留めるのは、お互いにとって不幸なことですから。
正直なところ、この頃の学生は念入りな準備をして就活に臨まれるので、時間の限られた面接だけで相手を見極めるのは難しいです。特に高校生は面接練習をしっかりして、自己紹介や志望動機を暗記されて来られる方が多く、人となりがわかりにくい場合が多いですね。
比較的初任給が高いこともあって、より高い収入を得るためや、地方から東京に出る足掛かりのために就職されるケースもありますが、あまりお金ありきで入社してほしくはありません。
前川 やはり理念やビジョンへの共感が第一ということですね。
浜野さん はい。お客様を喜ばせ、感動や驚きを与えられるのが先で、その結果として売上が伸びて給与が上がる、というのが正しい順序です。自分の待遇を上げるためだけに働くのは弊社では好まれませんし、実際に成功もしづらいです。
前川 全く同感です。私たちも人材育成を支援する企業で、給与や待遇など働きやすさより働きがいを重視する組織風土を醸成しています。
私自身、経営者として「隗より始めよ」を肝に銘じ、社内でも「お役立ちが第一。その結果『ありがとう』としてのお代を頂くのがビジネス」と語り続けています。御社では、組織の理念やビジョンを起点にした経営が気持ちいいほど真っすぐで、素晴らしいですね。