AIはあくまで現場の判断を助けるツール
前川 人材不足と技術進化もあり、巷ではAI活用による店舗運営、セルフレジや無人店舗なども登場してきています。こうしたなかで、人がなすべき仕事や働き方はどうあるべきか、どう変わっていくとお考えですか。
浜野さん 今後人手不足が進み、人件費が大幅に上がっていくこと必至です。作業の効率化を進めるために、各店舗の業務の一部をセンターに集約し、店舗業務を軽減していくことになるでしょう。
一方、店舗の従業員が行う業務とそうでない業務に関しては、きちんと見極めていきたい。たとえば、AIに販売予測を立てさせて、それに従って働くだけになってしまうと、仕事はつまらなくなりますよね。AIを使うとしても、判断のサポートツールとして予測を立てることに用いつつ、最終判断は現場の裁量に委ねるという形になると思います。
企業は社会の変化に機敏に対応し続けなければ生き残れませんが、変えるべき部分と変えてはならない部分があります。そのなかでも、常に店舗の判断によって物事を動かしていく形は変えてはならないと感じます。それが従業員の働きがいや、働く楽しみにつながっているのですから。
さきほどのセンター化の例でも、効率的だからといって、何でもかんでもセンター化すべきかというとそうではないかもしれません。たとえば、お肉をどうトリミングしカットするかなどは、アートとして創造的な楽しみの部分があるかもしれない。そうであれば、現場に残すことも必要だという考えです。
前川 すでに台湾で事業展開されているものの、現在は国内展開中心ですが、今後更なるグローバル展開はありますか。
浜野さん OICグループ(オイシーグループ。2023年に株式会社ロピア・ホールディングスより株式会社OICグループに社名変更)のビジョンとして、明確にグローバル展開を目指しています。
社名のOICは「『Oishii is Culture!』=『おいしい日本食とは、新しい食文化だ!』という意味で、O・I・Cでひとつのストーリーになっています。OICグループの経営理念は「日本の食を届け、新たな文化をつくり、世界の人を健やかに」です。グループ一丸となって、おいしい日本の食文化を世界に伝えてきたいと考えております。
そのうえで、特にアジアへの展開は不可欠のミッションだと考えています。
前川 グローバル展開を進めるなかで、現場に任せる人の活かし方についてはどうお考えですか。
浜野さん グローバル展開では、より現場に任せる方向が強くなると思います。なぜなら、食文化というのは国によって大きく異なるからです。日本国内ですら、関東と関西で食の好みや味付けが異なるほどですから、海外となればなおさらです。日本の食を広めるとはいっても、日本の味をそのまま届けて価値提案するものと、現地に合うものにアレンジするものを見極めることが必須であり、それには現地の方の力が不可欠です。
現地開拓の最初は日本のOICグループが行うとしても、最終的には現地の方に委ねていきたいと考えています。台湾でも、すでに管理部門のトップは現地の方に任せています。