スマホ依存が問題になるなか、あなたはウェブサイトやアプリが表示されるまで何秒間我慢できるだろうか。
モバイル専門の市場調査を行うMMD研究所(運営元はMMDLabo、東京都港区)が2024年8月20日に発表した「2024年スマホ依存に関する定点調査」によると、「10秒未満」が限界という人が7割に達し、「5秒未満」も4人に1人いる。
ずいぶん短気になったものだが、大らかにスマホを使うにはどうしたらよいか。調査した専門家に聞いた。
アプリ表示まで「3秒」我慢できない人も17%
MMD研究所の調査(2024年7月13日~15日)は、スマホを所有している18歳から69歳の男女1万人が対象。
まず、全員に「スマホ依存を自覚しているか」を聞くと、「かなり依存している」(23.4%)と「やや依存している」(39.1%)を合わせ、6割強(62.5%)が「依存している」と答えた【図表1】。
性年代別でみると、男性10代(79.4%)、女性20代(75.2%)、女性10代(75.0%)の順で依存度が高い。一番低いのは男性60代(53.1%)だった。
【図表2】は、「依存している」と回答した6251人を対象に、性年代別に比べた依存していると思うジャンルの上位5だ(複数回答可)。トップは男性では10代~20代が「動画視聴」、30代~40代が「ネットサーフィン」、50代が「スマホ決済」、60代が「LINE」。
一方、女性では10代~30代が「SNS」、40代が「ネットサーフィン」、50代~60代が「LINE」と、男女差が大きい。
ところで、スマホ依存度が高いと、ウェブサイトやアプリが表示されるのに時間がかかるとイライラする人が多いといわれる。そこで、表示されるまでに我慢できる時間とストレスを感じる時間を聞いた結果が【図表3】だ。
我慢できる時間で最も多かったのが「10秒以上」(30.7%)。そして、「5秒~10秒未満」(29.2%)、「3秒~5秒未満」(23.2%)と続いた。なかには「3秒未満」でも我慢できない人が16.5%いた。
また、ストレスを感じる時間で最も多かったのが「10秒以上」(51.2%)で、「5秒~10秒未満」(23.1%)、「3秒~5秒未満」(16.1%)と続いた。「3秒未満」でもストレスになる人が9.6%いた。
表示されるのに3秒弱でもイライラがつのる人が約10人に1人いることになる。
財布とスマホ、どちらが紛失したら困る?
今回の結果をどう見たらよいのか。J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったMMD研究所の担当者に話を聞いた。
――「スマホ依存に関する定点調査」とのことですが、どんな調査をしてきましたか。これまでの調査に比べて依存度の割合は高まっているのでしょうか。
担当者 毎年ではありませんが、定期的に聴取しているテーマです。スマホ依存の自覚をベースに調べており、2019年以降では毎年、「依存している」人は70%前後で推移しています。今回は62%ですから、少ないほうですが、「かなり依存している」と答えた人が23%もいました。これは、過去最高の割合です。
それ以外では、時事ネタなどと絡めたものを聴取しています。過去には「歩きスマホに法的規制を設けるべきか」や「スマホ接触時間」「スマホ依存度チェック」などがあります。
「財布とスマホ、紛失して困るのはどっち?」という問いかけでは、年々スマホの割合が高くなっており、2022年にはついに10代・20代では同数になりました。
――たしかにスマホがあれば、キャッシュがなくても大丈夫だし、個人情報がいっぱい入っていますから、財布より大事な人も多いでしょうね。
ところで、スマホ依存度は男性では10代、女性では10代~20代が突出して高いですが、どういう理由からでしょうか。
担当者 【図表2】の「スマホに依存していると思うジャンル」の上位3を見てください。
男性10代では「動画視聴」が62.2%、「SNS」が54.6%、「ゲーム」が50.4%となっています。いずれも接触する時間が長いものばかりなので、依存の一因となっていると考えられます。
同様に女性でも10代~20代のトップ3を見ると、「SNS」「動画視聴」「音楽」「LINE」と、接触する時間が長いものばかりが並びます。
「10秒も待てないのか」と「10秒もよく我慢できるな」
――なるほど。ウェブサイトやアプリ表示までに我慢できる時間、ストレスに感じる時間の調査が非常に面白いです。ストレスに感じる時間が「5秒未満」が25%(4人に1人)、「10秒未満」が49%(半数)という結果ですが、これをどう評価しますか。
個人的には私のスマホは重くて、LINEが表示されるまで10秒前後はかかるので、みんなずいぶん気が短くなったな、と思いますが。
担当者 「我慢できる時間」と「ストレスに感じる時間」は今回初めて聴取しました。
近年、通信大手の大規模通信障害が相次いで発生したため、スマホのつながりやすさについてユーザーの関心が高まっています。
その背景から、ユーザーにウェブサイトやアプリの表示がどの程度の時間であれば我慢できるかを尋ねたのが調査のきっかけです。
文字で見る「10秒」と、実際に体感する「10秒」には違いがあるのではないかと個人的には感じています。「10秒も待てないのか」と思われるかもしれませんが、私からみると、「10秒」もよく我慢したというのが現実でしょう。
というのも、途切れることなく、スムーズに通信ができることが当たり前になっている現在では、「10秒」は非常に長く感じられる。そのため、このような結果になったのだと思います。
充電残量が30%を切ったら、使わないのも1つの方法
――専門家として、スマホ依存から抜け出すにはどうしたらいいと思いますか。何かいい方法があるでしょうか。個人的には私は、手持ちぶさたの時に読む文庫本を常時持ち歩いています。
担当者 私自身について言えば、スマホ依存を感じていますが、特に抜け出そうとは考えていないので、対策を取っているわけではありません。
しかし、依存から抜け出そうと意識している方には、使用時間の制限を設定したり、充電の残量が30%を切ったらスマホを使わないようにしたりするのが一つの方法かと思います。
また、スマホの通知が頻繁にくると、そのたびにチェックしてしまいがちです。SNSやメールなどの通知をオフにすることで、スマホに触れる回数を減らすことができますので、気になる方はぜひ試してみてください。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)