戸塚ヨットスクールの創設者・戸塚宏氏が出演するYouTubeチャンネル「令和ヨットスクール」が、2024年8月8日までに開設された。19日現在公開されている2本の動画では、戸塚氏が体罰についてなど自身の主張を展開している。
コメント欄には、戸塚氏の持論への批判が相次いでいる。なぜ今、戸塚氏の考えを伝えるYouTubeチャンネルの開設に至ったのか。チャンネル運営者に聞いた。
国力は「女じゃない。女に頼るのはよせ」
戸塚ヨットスクールは、1976年に戸塚氏により「オリンピックで通用するような一流のヨットマンを育てる」との理念により開設された。その後、戸塚氏の教育方針が不登校の子どもや非行少年の更生・改善に効果があるとして注目され、こうした子どもたちの入校が増えた。
しかし、複数の訓練生の死亡・行方不明事件が起き、行き過ぎた訓練の体罰によるものだとして傷害致死罪などで83年に戸塚氏およびコーチが逮捕される。97年に名古屋高裁が執行猶予なしの実刑6年の判決を言い渡し、02年には最高裁が上告棄却し刑が確定した。戸塚氏は出所後、現在も戸塚ヨットスクールを運営している。
戸塚氏は24年8月8日に公開された「【戸塚宏】令和の今、体罰を語る」と題した1本目の動画では、体罰と暴力は「目的」として、「暴力は自分の利益のためにやるやろ。体罰はやられる方の利益のためにやるんだ」などと持論を展開した。
15日には「【戸塚宏】令和の若者へ、愛のある喝」と題した動画を公開。その中で戸塚氏は、「円安がいつまで経っても続くというのは、国力が低下したからでしょ」といい、「国力というのは、日本の男の力を全部合わせたやつや。女じゃない。女に頼るのはよせ」などと持論を展開し、若者に向けて激励の言葉を送った。
これらの動画には、「体罰を受けた子供が健全に成長できると思えない」「人が死ぬほど追い詰められるって事が良いってことは絶対にない」「どんな理論であろうと普通に犯罪なだけ」「叱ると体罰はするは別だぞ」などの声が寄せられた。
2つの動画の最後には、「このチャンネルは戸塚先生を支援する2人の青年が運営しています。戸塚校長の意思を後世に残すべくYouTubeを始めました」と説明されている。J-CASTニュースはこの運営スタッフに話を聞いた。
著書読んで「大部分の思想に共感」
取材に応じた運営スタッフは、戸塚氏に興味を持ったきっかけについて「メディアで戸塚氏を見て衝撃を受け、一種の拒否反応を抱いた一方で、人生全てをヨットスクールの活動にかけている戸塚宏校長という人物に興味が湧きました」と明かす。
運営スタッフによると、戸塚氏の著書「本能の力」(新潮社)を読み「大部分の思想に共感」したほか、講演に参加する中で「この思想は後世に残すべきだと考えるようになりました」という。
「そこで講演に何度か通い、本人に直接交渉してYouTubeを運営していくことになりました」
とYouTubeチャンネル開設の経緯を明かした。YouTubeという媒体を選んだ理由については、「編集により情報が加工されたり本人の意図しない形での切り抜きを避けるためです」と説明する。
なお、2人の運営スタッフの関係は「友人・仕事仲間」だという。
「一部の人には好意的に届いています」、今後も「生の声をなるべく最低限の編集で」
動画の内容に批判の声が大きいことについては、
「批判の声がほとんどだと思いますが、一部の人には好意的に届いています。特にテレビ番組ではなく本人の話をちゃんと聞きたいという人のためのチャンネルですので目的は達成していると思います」
とした。
さらに「議論が行われることだけでも発信する意味があると考えます」とも説明する。
今後については、「戸塚校長の生の声をなるべく最低限の編集で届けていきたいです」としつつ、「まずはチャンネルを知ってもらわないと見てもらえないというのも事実です。私たち2人がマーケター出身というキャリアもいかして多くの人にリーチする動画と、濃い思想を発信する動画の両方を届けていければと思います」と展望を語った。