パリ五輪で、フェンシング日本代表は大躍進を遂げた。個人・団体で金2、銀1、銅2と計5つのメダルを獲得した。
この競技で北京五輪(2008年)、ロンドン五輪(12年)と2大会連続で銀メダルに輝き、現在は国際オリンピック委員会(IOC)委員を務める太田雄貴さんは、Xで、日本の五輪選手団をねぎらった。同時に、「少しだけ耳の痛いかもしれない」投稿をした。そこには1枚の衝撃的な画像が――。
認知があっても、人気がないと
太田さんの主張は、メダルをとることと、集客できることはイコールではないというもの。メダルをとるのは「認知」、集客できるのは「人気」で、「認知があっても、人気がないとお客さんに足を運んでいただく事は簡単ではありません」との説明だ。ただし、「競技を知ってもらう、きっかけとしては、メダルを獲得する事は大変意義のある事です」とも。
そのうえで太田さんは協会事務局に、「次に行われる大会の告知や、普及イベントなどの準備にはなるべく早く取り掛かってください。どんどん自分から発信しないと、情報は簡単には届きません」と警鐘を鳴らす。
太田さんはこの投稿に、ロンドン五輪で銀メダルを獲得した後に実施されたフェンシング全日本選手権の写真を添えている。そこには、ガラガラの観客席を背景に試合をする2人の選手が写し出されていた。
「オリンピックでメダルを取れば全てを好転させる訳ではありません。一方で変わっていく一歩になるのは間違いありません」
太田さんはそうエールを送る。
ラグビーW杯で歴史的勝利後の「不手際」
五輪やワールドカップ(W杯)で好成績を収めたあと、国内での競技人気が持続するか、一過性で終わるかは選手にとって大きな問題だ。
2015年、ラグビーW杯イングランド大会で、日本が南アフリカに歴史的な大金星を挙げた。過去の大会で全く振るわなかった代表チームは同大会で3勝と大活躍。日本では「ラグビーブーム」が起きた。
大会後の国内リーグに目を向けると、開幕戦はチケットが完売した。ところが蓋を開けると、スタンドは空席が目立った。当時の報道を見ると、ラグビー協会側が一般客向けの販売を抑え、招待券や回数券の来客を多く計算していたが、見込みが甘かったのだという。
当時の日本代表で、この試合に出場していた田中史朗選手(2023-24シーズンで引退)は協会に苦言を呈した。20年3月5日付の産経新聞電子版によると、担当者に電話して直接訴えたという。
「選手はほとんどお金をもらわずに、日本ラグビーのために頑張っているのに、どうしてこういうことになるんですか」
記事は、「あの人気をその後、継続できなかったのは僕たちの責任であり、協会の責任だと思います」と続く。だが、自国開催となった19年のW杯で日本は初の8強入りを果たし、ラグビー人気に再び火が付くこととなった。