子どものスマホ利用について、親の心配事のナンバーワンは、オンラインで誰とつながっているかわからないことだ。
そんななか、NTTドコモの研究機関、モバイル社会研究所(東京都千代田区)が2024年8月5日に発表した「【子ども】中学生の約4割の親は子どもがスマホでつながっている相手を把握していない」によると、中学生の親の半数が相手を知らないことがわかった。
親は子どもとどう接したらよいのか、調査担当者に聞いた。
SNSやゲームで、さまざまな相手とつながっている
モバイル社会研究所の調査(2023年11月)は、関東1都6県の小学生および中学生とその親600人が対象だ。
同研究所の2024年1月の調査では、スマホを所有させているのは小学生低学年で18%、高学年で42%、中学生になると79%になる。
まず、親はどの程度子どものスマホの利用について把握しているのだろうか。「利用時間」「利用しているサービス・アプリ」「オンラインでつながっている相手」「オンラインでの支払い・課金」の4つの事項に聞いたのが【図表1】だ。
ここから、2つのことが見えてくる。
1つ目は小学生より中学生のほうが、把握している事項の割合が低いこと。2つ目は「オンラインでつながっている相手」について、特に把握していない親の割合が高く、中学生では約半数となることだ。
SNSやゲームなど、さまざまな利用シーンで子どもたちはつながっており、親も把握しづらい状況が垣間見える。
次に、親が把握している割合が特に低かった「オンラインでつながっている相手」について、普段の親子会話の時間と合わせて見た結果が【図表2】だ。会話時間が長いほど、オンラインでつながっている相手を把握している割合が高くなる。
普段の親子会話の中で、オンラインでつながっている相手について、話題にあがっている可能性があるようだ。
オンラインでつながる相手は、本人同士も対面していない場合も
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったモバイル社会研究所の水野一成さん(子ども・シニア・防災調査担当)に話を聞いた。
――【図表1】の「子のスマホ利用を親がどれだけ把握しているか」ですが、全体的に中学生のほうが、小学生より把握している割合は低いのはなぜでしょうか。
率直に言って、有害サイトにアクセスしたり、SNSで見知らぬ相手とつながったりとか、中学生のほうが何をやっているか心配になると思います。
水野一成さん 小学生のほうが高く出た理由としては、2つの点が推察されます。
1つ目は、当研究所の調査ではスマホの所有開始年齢が10.6歳(小学生高学年)ということ。持ち始めの時期は、より親が子の利用を見ている可能性があるということです。
2つ目は、やはり親と子の関係です。当調査においても、親と子の会話時間は小学生のほうが長いです。コミュニケーション頻度が多く、その中でスマホに関連する話題も出るのではないでしょうか。
――問題になっている「オンラインでつながっている相手」について、中学生は特には把握していない親が多いですが、その理由は何でしょうか。
水野一成さん オンラインでつながっている相手は、日常の中での目視では把握が難しく、子どもから聞かないと分からないことが多いです。しかし、中学生は精神的に親から自立していく時期でもあり、親がすべてを把握するのは難しくなってきます。
オンラインでつながっている相手は、本人同士が対面で会ったことがなく、オンライン上で知り合った相手もいます。SNSだけでも色々なサービスがありますし、ゲームでのつながりもあります。
オンライン上のつながりは多岐にわたり、また匿名性が高いため、親から一方的に確認することは困難かと思います。このようにいくつかの理由が重なり、相手を把握し難いのではないでしょうか。
学校の友達のように、自然に話題に出るように
――なるほど。そうなると、相手を把握するには子どもに直接聞かないとダメなのでしょうか。あるいは、子どもを信頼して聞かないほうがいいのでしょうか。
水野一成さん それぞれの家庭での環境や親の考え方、子どもの日々の行動にもよると思います。先ほど述べたとおり、中学生は親からの自立が進む時期でもあり、必ずしもすべてを把握しなくてはいけないわけではないと思います。
ただ、昨今のSNSに関連する事件などを考えると、ある程度把握する、もしくは、オンラインでつながった相手との関係の注意点やリスクについて、子どもと話し合うことが大切ではないでしょうか。
――親子の会話時間が長いと、「オンラインでつながっている相手」を把握している割合が高いという結果も興味深いです。やはり、日ごろからコミュニケーションを深めておくことが大事だということでしょうか。
水野一成さん おっしゃる通り、普段の会話の中で「(学校などの)友達話題」が自然に出るのと同じように、オンラインでつながっている相手についても話題をあげることもよいのではないでしょうか。
普段そういった素地がない場合、いきなり子どもに聞くと、かたくなに話したがらないことも想定されます。
「相手を把握していない親=悪」と決めつけないで
――今回の調査で、特に強調しておきたいことがありますか。
水野一成さん 親も時間がないなか、子どもが長時間接しているスマホの利用状況を細かく把握することまでできないこともあると思います。
また、親と子の関係もさまざまです。スマホに限らず、その他のコミュニケーションが少ない場合もあります。また、子どもの自立を重視し、あえて詳細までは聞いていない、という場合もあるかと思います。
そういった親と子の関係があるうえで、この結果を見てほしいです。この調査結果を見られた方が、「把握していない親=悪」といった一辺倒な解釈にならないことを望みます。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)