スマホユーザーにとって大きな関心事は、携帯料金の安さと同時に外出時のつながりやすさだろう。
モバイル専門の市場調査を行うMMD研究所(運営元はMMDLabo、東京都港区)が2024年7月30日に発表した「スマートフォンの繋がりに関する調査」によると、通信のつながりやすさではソフトバンクが1位に。
一方、外出時のサービス別満足度ではKDDIが1位になった。いったい、どういうことか。調査担当者に聞いた。
電車内、繁華街、イベント会場のつながりやすさ1位は?
MMD研究所の調査(2024年7月5日~9日)は、予備調査と本調査を分けた。予備調査では18歳~69歳の男女1万人が対象。本調査では大手4キャリアを契約している2000人に、詳しく通信のつながりやすさを聞いた。
なお、今回は通信経験に焦点を当てているため、docomo、au、SoftBank、楽天モバイルという主力ブランドだけでなく、ahamo、povo、LINEMOなどオンライン専用プランとキャリアサブブランドも含んでいる。
まず、予備調査の1万人に直近半年で通信がつながりにくい経験をしたかどうかを聞くと、36.9%がつながりにくさを経験していた。
経験者に「つながらなくて困ったこと」を聞くと(複数回答可)、「モバイル決済の表示が遅い」(30.5%)、「LINEなどコミュニケーションアプリのつながりが悪い」(24.9%)、「メールのつながりが悪い」(20.0%)などが上位に並んだ【図表1】。
予備調査から大手4キャリアを契約している2000人を抽出し、外出している際のさまざまなシーンで、直近半年の通信へのつながりやすさについて「つながりやすかった」から「つながりにくかった」までの5段階で聞いた。
【図表2】が、利用シーンでの「つながりやすかった」「ややつながりやすかった」を合わせた、大手4キャリア別の「つながりやすさ」の割合だ。
これを見ると、ソフトバンクが「電車やバスなど公共交通機関での移動」、「繁華街」、「主要都市のターミナル駅」などでダントツの1位で、総合でも1位となった。
2位KDDI、3位NTTドコモ、4位楽天モバイルという結果だった【図表2】。
一方、外出時における利用サービス別通信の満足度も聞いた。「SNS」や「インターネットブラウザ」「通話(LINE通話など)」「オンライン動画」「QRコード決済」の5サービスについて、「満足」から「不満」まで5段階で聞いて比較した【図表3】。
これを見ると、サービスごとに満足度の順位にバラツキがあるが、総合満足度では1位KDDI、2位ソフトバンク、3位NTTドコモ、4位楽天モバイルという結果になった。
大規模通信障害から、ユーザーはつながりやすさを意識
今回の結果をどう見たらよいのか。J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったMMD研究所の担当者に話を聞いた。
――スマホの通信品質といえば、英国のモバイル分析企業Opensignalが、世界中の1億台以上のデバイスから毎日収集する数十億の測定値を使用して、モバイルネットワークのユーザー体験を分析する大規模な手法が有名です。
MMD研究所がスマホの通信品質を調査したのは初めてではないでしょうか。そのきっかけや狙いは何でしょうか。
担当者 はい、初めての調査です。ここ数年、大手の大規模通信障害が何度か起こっています。そこからなのか、徐々にユーザーの間で、スマホのつながりやすさの問題について見聞きするようになりました。
コロナ禍では約3年近くイベントなどが中止になり、ライブ会場やお花見など人が多く集まるところに行けませんでした。3年近く外出がなかったことで、そういう場所でのつながりにくさを忘れていたことも要因でしょう。
ただ単に1回のつながりにくさでは、こうは話題にあがらないと思います。積み重なる通信のつながりにくさが、現在のユーザーの不満につながったのではないでしょうか。
大手キャリアの情報より、ユーザーの体感・経験を大事に
――なるほど。しかし、Opensignalのような世界レベルの膨大なデータを分析・比較する方法と違って、外出時のさまざまなシーンでの通信品質の比較は難しかったのではないでしょうか。
よくさまざまなシーンやサービスをグラフにし、大手4キャリアを比較したと感心しますが、その際の工夫や留意点は何ですか。
担当者 今回、ユーザー自身が経験した、直近半年の外出時の通信のつながりを聞いています。今あるスマホのつながりやすさの情報は、通信キャリアが発信するテクニカルな情報がほとんどです。通信キャリアやネットワークに関わる人にとっては共感できますが、ユーザー自身の経験や体感は別物と考えます。
そこで、ユーザーに「実際につながりやすかったか、どうか」という体験を5段階のアンケートで聞き、その結果をグラフに可視化しました。
具体的には「電車やバスなど公共交通機関での移動」「繁華街」「主要都市のターミナル駅(東京、名古屋、大阪など)」「エレベーターや地下駐車場などの建物の中」「展示即売会・物産販売会などのイベント会場」「スポーツ観戦(東京ドームなど大きな規模会場)「お花見や花火大会」「コンサートやライブ会場」という8つの利用シーンと、全体的にみたつながりやすさで聴取しています。
ソフトバンクとKDDI、それぞれの企業努力
――結果をみると、外出時の各シーンでのつながりやすさで、ソフトバンクが非常にいいことが目立ちます。総合でも1位です。この理由は何でしょうか。使っている電波の質、あるいは電波網などの影響があるのでしょうか。
担当者 各社ネットワークについて改善し、発表しているかと思います。その中でも2023年にソフトバンクが実施した説明会によると、通信速度よりもユーザーの体感を損なわないことに最も重点を置いていると発表していました。そういう改善が今回のユーザーアンケートの結果につながったのかと思います。
――ところが、利用サービス別通信の満足度ではバラツキがあり、KDDIが1位、ソフトバンクが2位、シェアトップのNTTドコモが3位という結果です。この結果をどう評価しますか。通信のつながりやすさ以外のどんな面で差が表れたのでしょうか。
担当者 ソフトバンクは参入当初、今の楽天モバイルと同じように通信品質に課題があり、満足度も低かったです。しかし、昨今のOpensignalの通信体感レポートでも評価が高く、今回の調査でもユーザー体感ではトップの成績であり、評価をあげています。
KDDIは2022年に大規模通信障害を起こしてから、高橋誠社長が陣頭指揮をとり、改善努力をした結果、大きな通信障害や速度低下の声は聞こえてこなくなりました。その結果、今回の調査で満足度は高かったといえます。
1社に固執せず、気軽に他社のネットワークを使おう
――今回の調査で特に強調しておきたいことがありますか。
担当者 各社さまざまなプランやオンライン専用プランなどを提供し、ユーザーのライフスタイルにあったサービスが選べるようになっています。
以前とくらべて2年縛りなどがなくなり、携帯電話番号ポータビリティしやすい状況になりました。セット割などもありますが、以前より気軽に他社のネットワークを使えるようになったので、1社に固執せず、いろいろ試して自身にあったキャリアを選んではどうでしょうか。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)