熱波で高齢者数万人が死んだ欧州、その反省から広がる
J‐CASTニュースBiz編集部は、第一生命経済研究所の福澤涼子さんに話を聞いた。
――私は70代半ばですが、昭和には「下宿」がありました。地方から上京した学生や若い社会人が当たり前に下宿に間借りしました。上京後、不動産屋を歩いて自分で探したり、大学から紹介されたりしたものです。
思えば、特に女性の場合は、家主のオバサンに郷土の母親代わりに「嫁入り前の娘さんを預かる」という意識が強く、門限を夜8時などと厳しく制限、3回破ったら追い出したりするケースもありました。
そうした昭和の下宿と、「異世代ホームシェア」とは、ズバリどこが違うのでしょうか
福澤涼子さん 門限があって破ったら罰則といった当時の下宿とは大きく異なりますね! 現代の価値観では、そうした束縛の強い下宿はあまり支持されないのかもしれません。ただ、「異世代ホームシェア」は「次世代下宿」とも呼ばれるので、かつての下宿の延長と考えることもできます。
昔は、単身に適したアパートやマンションが少なく、上京する若者が住むところがあまりありませんでした。だから、持ち家の空いている部屋を貸す下宿が、ビジネスとして成立したのでしょう。
今、高齢者の孤立がどんどん進んでいます。「異世代ホームシェア」は、高齢者の持ち家の空いている部屋に若者を住まわせて、若者と交流することで、高齢者の孤立という社会課題の解消を目指しています。また、若者にとっても安く住むことができるので、ウィンウィンの関係です。
改めて昭和の下宿が見直されているということだと思います。
――「異世代ホームシェア」は、ビジネスが主な目的ではないということですね。海外から入ってきたとリポートにはありますが。
福澤涼子さん 1990年代にスペインで高齢者の孤独化を防ぐ社会事業として始まり、欧州に広がりました。2003年に歴史的な猛暑(熱波)が欧州を襲った時、欧州全土で約7万人、フランスでも75歳以上の高齢者を中心に1万4800人が亡くなりました。命を落とした高齢者の大半が一人住まいだったと言われます。
一方、パリなどでは年々家賃が高くなり、若者が市内に住むことが難しくなっています。もし、熱波の時に若者が高齢者と一緒に住んでいれば、多くの命を救えたでしょう。
そこで、フランスの自治体やNPOが中心になって独居高齢者の住宅の空き部屋を若者に安く紹介する「異世代ホームシェア」が進みました。