パリ五輪・柔道男子100キロ超級で、地元フランスのテディ・リネール選手が金メダルに輝いた。五輪ではロンドン(12年)、リオデジャネイロ(16年)に続く3度目の栄冠となる。
現地時間2024年8月2日の決勝では一本勝ち。見事な勝利だった。一方、準々決勝では相手選手と「ひと悶着」あった。
襟元つかんだまま、押さえつけているようにも
騒動は準々決勝で、勝敗が決した直後に起きた。
足技をかけたリネール選手が、相手のトゥシシビリ選手(ジョージア)の上に、覆いかぶさる形で両選手が畳の上に倒れ込んだ。映像ではこの間、リネール選手が審判の「一本」の判定を目で追いながら左手でトゥシシビリ選手の道着の襟元をつかんだまま短時間、上から押さえつけているように見える。
その後、立ち上がったリネール選手の体を、トゥシシビリ選手が足で払いのけようと持ち上げて倒す。畳の上で仰向けになったリネール選手に詰め寄り、何やら言葉を発した。
立ち去ろうとするトゥシシビリ選手に、今度はリネール選手が寝転んだ体勢のままその足をつかもうとする。トゥシシビリ選手が振り返って両脚でリネール選手を押し倒す――。
こうした揉み合いの末、トゥシシビリ選手は反則負けの裁定が下った。これにより敗者復活戦の出場が認められず、3日に行われる混合団体戦にも出られなくなった。
トゥシシビリ選手の「蹴り」は当然、許されない。一方で、リネール選手に何の「おとがめ」もなかったことに納得できないとの声がXには多い。
襟元をつかんでいた手が相手の喉の近くを押しているように見えるとする意見や、「仕掛けているのはリネール」と「乱闘寸前」の原因をつくったと考える人もいた。
相手が不利と見るや、まともに組まず
リネール選手は過去の五輪で、日本人選手との「因縁」がある。リオデジャネイロ五輪の柔道男子100キロ超級決勝で、原沢久喜選手との試合が批判を浴びたのだ。
開始から1分少々で、原沢選手は2度の指導を取られた。するとリネール選手は、徹底的に原沢選手から逃げ回る戦術を取った。
今回のパリ五輪では指導3つで反則負けとなるが、リオ五輪当時は反則ポイントが1つでも多いと負けだった。まともに組み合わず、ほとんど技を出させないリネール選手。結果、金メダルをもぎ取った。
もちろんこれは、当時のルールでは違反でもなんでもない。だが逃げまくるスタイルは、批判を浴びた。以後、強くても「潔くない」「汚い」手を使う選手だと感じる人がいるようだ。
それだけに、今回の騒動で「なぜリネール選手は許されたのか」と釈然としない向きが、Xには多くみられた。