夏の夜空を彩る花火大会のシーズンが始まったが、全国の花火大会で有料席が高額化していることが、東京商工リサーチが2024年7月22日に発表した「2024年『主要花火大会』価格調査」で明らかになった。
中には、定員4人で16万円の豪華観覧席もあるという。花火大会のプレミアム化が進むなか、どう花火を楽しめばよいか。調査担当者に聞いた。
有料席の平均は3万4000円、全席有料の大会も
帝国データバンクの調査は、7~9月に開催される全国の花火大会のうち、観客動員が10万人以上の(平年)106大会が対象。約7割にあたる79大会で観覧エリアに「有料席」を導入していることが分かった【図表1】。
有料席を導入している花火大会の中には、日本三大花火の1つ新潟県の「長岡まつり大花火大会」(長岡花火)のように全席を有料化したケースもあり、花火大会の有料化が広がっている。
2023年から有料席を導入した75大会のうち、42大会(56.0%)で2024年から有料席の「値上げ」が判明した。
複数種類が用意された有料観覧席のうち、1区画(席)あたりの「最安値」平均は5162円。前年(4768円)に比べて8.3%(394円)の増加で、最安値平均が5000円を超えたのは初めてだ【図表2】。
一方、最前席や区画当たりの面積を広く確保したテーブル席、グランピングシート席など、多様な種類の観覧席が導入される最高額席の場合、2024年平均は3万4064円だった。
前年(3万2791円)に比べると3.9%(1273円)の増加だ。花火大会全体で有料席のプレミアム化・高価格化が進んでいる【図表2】。
なお、調査によると、最も高額な有料席は「2024松江水郷祭湖上花火大会」(島根県松江市・8月3日~4日)で販売された「VIPテーブル席」(定員4名)の16万円。宍道湖の美しい湖面で打ち上げられる花火を間近で楽しめる、専用トイレ・飲食・飲み放題付の豪華観覧席だ。
かつては青年団のボランティア、今は外部業者に委託
J‐CASTニュースBiz編集部は調査を行なった帝国データバンク情報統括部の飯島大介さんに話を聞いた。
――なぜ、これほど花火大会の有料化が進んでいるのでしょうか。
飯島大介さん タダではやっていけなくなったことが大きいです。
――なるほど。どういった事情があるのでしょうか。
飯島大介さん 昔は、地元の青年団、青年会議所の若い人たちが大勢ボランティアで参加し、警備や会場の設営、大会が終わったあとの掃除、片づけまでしていました。
地元企業も協賛金を寄付していました。今は少子化が進んで青年団がなくなっているところが多いし、企業も寄付金を出す余裕がありません。
会場の設営や警備、仮設トイレの設置、後片づけなどは業者に頼むほかありません。莫大な人件費がかかります。特に、警備員の時給はコロナ前の2019年に比べて1.2倍に上がっています。また、観客が増えていますから、安全対策のために警備員の数を増やさざるをえません。
しかも、7~9月は各地で花火大会以外の祭りも集中する時期ですから、どこも人手不足で莫大な人件費の予算がかかります。
ウクライナ戦争で、花火の原料の火薬の価格高騰
――花火の製作費も上がっているのですよね。
飯島大介さん 原料となる火薬は輸入品ですが、ロシアのウクライナ侵攻の影響を受け、銃火器類や爆弾類の消費が激しく、世界的に大幅に値上がりしています。そこに円安の加速が加わり、コロナ前の2019年に比べて1.8倍に高止まりしたままです。
全体的に運営費が増えているので、有料席の値段を上げたり、有料座席数を拡充したりして、工面するところが増えているのです。
――日本で「HANABI」(花火)を楽しみたいという外国人観光客の増加の影響はありませんか。観光業者のウェブサイトを見ると、全国の花火大会のチケット情報を載せたうえ、地元のホテル宿泊費と周辺の有名飲食店代をセットにして数万円で売り出しているところがいくつかあります。
飯島大介さん そうした花火観光サイトは、基本的に花火会場に面したホテルのいい部屋から花火を見る仕組みになっているので、有料席の値段のアップにはつながらないと思います。しかし、外国人観光客の呼び水にはなるでしょうね。
――私は、地元の花火大会ではタダでよく見られる、穴場的な場所を利用していたのですが、近年はSNSでその場所の情報が拡散して、逆に大混雑するようになってしまいました。なかなかタダで楽しむことが難しくなってきましたね(笑)。
飯島大介さん そういう穴場は、どこに不審者がいるかわからないので、安全のためにも警備員の配置がさらに必要になってきます。
これからは、お金を出してでも、いい場所で、ゆっくり花火を楽しみたい人が増えるのではないでしょうか。
高額席の「売れる」「売れない」の二極化が進む
――花火大会の有料化は、今後も加速するのでしょうか。
飯島大介さん 有料化が加速したのは、アフターコロナが始まった2023年ですが、「花火の打ち上げ規模の割には、有料席が高すぎる」とか「アクセスが悪く、内容が交通費に見合っていない」といった批判が出て、赤字になったところも少なくありません。
高額席の「売れる」「売れない」の二極化がはっきり進みました。これからはしっかりしたマーケティングを行ない、価格にふさわしい魅力や価値があるのか、お客にはどういうニーズがあるのか、主催する自治体や団体のしっかりした検討が必要だと思います。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)