夏休みが始まったが、アルバイト探しにSNSを使う高校生が増えており、「闇バイト」に巻き込まれる危険が高まっている。
就職情報サイトのマイナビ(東京都千代田区)が2024年7月17日に「高校生に忍び寄る『闇バイト』とSNSでのアルバイト探し」という調査を発表した。
怪しい求人やトラブルにあった人も多い。高校生を守るにはどうしたらよいか。調査したマイナビの三輪希実さんに話を聞いた。
「怪しい求人見た」4割、「トラブルにあった」1割
マイナビの調査は、ともに2024年度の「高校生のアルバイト調査」と「大学生のアルバイト調査」を比較して分析したものだ。
警察庁によると、2023年に特殊詐欺事件で検挙された少年は431人に上り、総検挙人員に占める割合は17.6%と、特殊詐欺事件で検挙されている約6人に1人が少年。受け子になった経緯として「SNSから応募」が半数以上を占めている。
簡単に高額報酬を得る代わりに犯罪行為をさせられる「闇バイト」の事件が社会問題になっている。そこで、マイナビではバイトをする高校生が増加する夏休みに、高校生のSNSでのバイト探しの実態を報告した。
夏休みにバイトをしたい高校生は約8割(79.2%)に達する。デジタルネイティブな高校生にとって、バイト探しでもSNSは重要な情報収集源となっている。
【図表1】は、高校生と大学生のSNSでのバイト探し・応募・就労経験を比較したグラフだ。
これを見ると、バイト経験のある高校生の3人に1人以上がSNSを利用して応募しており、実際に「探した経験」「応募した経験」「働いた経験」のすべてで、高校生のほうが大学生を10ポイント近く上回っている。
5人に1人の高校生が親の関与なくバイト先を決めており、そのアルバイト先を決めた要因でも怖い結果が出た。「応募後にすぐ企業から連絡がきた」という迅速な対応が約4割(40.4%)で最多だった【図表2】。
「SNSで直接バイト交渉をすると、第三者のチェックが入らず、違法な労働に巻き込まれる危険があることを知っているか」との問いにも半数(50.0%)が「知らない」と答えた。
バイト経験がある高校生で、SNSで怪しい求人を見たことがある割合は約4割(41.3%)、SNSで怪しい求人の勧誘を受けた人も約1割(10.4%)、実際にトラブルにあった割合は8.6%だった【図表3】。
お小遣い減少、推し活の流行も高校生のバイト熱に影響
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったマイナビのキャリアリサーチラボ研究員の三輪希実(みわ・のぞみ)さんに話を聞いた。
――夏休みにアルバイトをしたい高校生がこれほど多いことに驚きです。やはり、お小遣いでしょうか? 「高校生のアルバイト調査(2024年)」をみると、お小遣いの平均額が1か月の8415円で、物価高の影響もあって前年の9178円から減らされていますが、なぜそんなにお小遣いがほしいのでしょうか。
三輪希実さん 現在バイト中の高校生のバイト目的は、2019年~23年まで「貯金のため」がトップでしたが、2024年で初めて「趣味のため」がトップとなりました。これにはお小遣いの減少、コロナ禍での自粛の反動、推し活の流行などが、若干ではありますが影響を与えたと考えられます。
また、一度もバイトをしたことがない高校生のバイトの目的として、「趣味のため」が最も高くなりました。趣味のために、バイトをしたいと思う高校生が多いと考えられます。
――高校生がバイトをするには、バイトを基本的に認めない学校なら「アルバイト許可証」が必要だし、それには親の承諾が必要です。また、企業が18歳未満の未成年と契約するには保護者の承諾が必要なはず。その辺のハードルを高校生はどう超えるのでしょうか。
三輪希実さん ご指摘の通りです。18歳未満の未成年は親の同意が必要であり、アルバイト許可書を発行する際にも親の承諾が必要となります。そのため、バイトの内容を明確にしたうえで、大人とコミュニケーションを取り、バイトを行うことが必要であると考えられます。
デジタルネイティブだから、SNSのバイト探しに抵抗感が薄い
――SNSで直接バイトを探したり、応募したり、経験したりする高校生がかなり多く、しかも大学生より割合が高いことが衝撃です。これは、高校生のほうが大学生より、スマホネイティブ度が高いということですか。
三輪希実さん デジタルネイティブである高校生のほうが、SNSでのバイト探しに抵抗感が薄いことや、大学生より社会経験が少ないことから、SNSでのバイト探しの危険性への認識が低いことが要因だと考えられます。
――実際にSNSで危ない目に遭っている高校生が少なくありません。怪しい求人を見かけた人が4割。怪しい求人の勧誘を受けた人が1割。しかも、違法な労働に巻き込まれる危険性を知らない高校生が半数。こうした調査結果をどう考えますか。
三輪希実さん 「闇バイト」が社会問題になっているなかで、高校生にも危険が迫っている様子が調査結果からみられたと思います。高校生がSNSの利用やバイト探しについての正しい知識を身に付けるためには、教育現場での発信や、親など周囲の大人も子どものバイトに関心を持ち、注意していく必要があると考えます。
特に、夏休みは教育現場との関わりが少なくなり、周囲の大人の目が減りますから、普段よりコミュニケーションが必要な時期と言えるのではないでしょうか。
高校生は、不安を感じたらすぐ周囲の大人に相談しよう
――保護者や学校は、バイトをしたいという高校生に、どう対応したらよいでしょうか。また、高校生にどうアドバイスしますか。
三輪希実さん 高校生の自由は尊重しつつ、より一層大人や教育機関がSNSの正しい知識を啓蒙していくことが必要です。また、社会経験が少ない高校生がトラブルに巻き込まれないように、身近な大人や学校側から積極的にコミュニケーションを取っていくことが重要だと考えます。
夏休みなどの長期休みは高校生のバイト意欲が高まり、SNSでのバイト探しを行う高校生も増加する時期です。何より「闇バイト」に関わらないように周囲の大人が注意を払うことが必要です。
高校生にも、応募の手軽さ・時給が高いことに惑わされて、安易に「闇バイト」に手を出さないよう気を付け、長期休みを充実させてもらいたいです。自分だけでは気づけない・わからないこともあるでしょう。不安を感じたら、すぐ周囲の大人に相談することを常に意識してください。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
【プロフィール】
三輪 希実(みわ・のぞみ)
株式会社マイナビ キャリアリサーチラボ研究員
2018年マイナビに新卒入社、就職情報サイト『マイナビ20XX』の営業に3年従事。現在、個人のキャリアや雇用のあり方に役立つ情報を提供する「マイナビキャ リアリサーチLab」で、主にアルバイトや派遣社員などの非正規採用領域における雇用や労働に関するさまざまな調査データやりポートの分析を行う。