転職活動において「副業可」の会社の志望度は「副業不可」より上がるのか――。そんな質問を20代の社会人に投げかけたところ、「上がる」と答えた人が27.4%を占め、「どちらかといえば上がる」を加えると59.0%の人が肯定的に捉えていることが分かった。
回答者からは「副業可の会社は自由な社風という印象を受ける」と好意的に評価する声もあった。しかし企業の人事担当に聞くと、「副業」を許可する会社側の理由には、働く人にとって手放しでは喜べない事情もあるようだ。
副業可なら「副業したい」と答えた20代は65%
この調査は、学情が20代専門転職サイト「Re就活」とWebメディア「20代の働き方研究所」のサイト来訪者を対象に行ったもの。
勤務先の企業で副業が認められていた場合、「副業したい」と答えた人は35.6%、「どちらかといえばしたい」が30.6%だった。一方で「どちらともいえない」も21.2%おり、「副業はしたくない」と「あまりしたくない」を合わせると12.6%となっている。
副業したい人からは「本業のほかにもう1つ収入源があると安心できる」と経済的理由をあげる自由回答があった。また、「本業以外でもスキルアップの機会を得たい」「新しい仕事に挑戦して自分の可能性を探りたい」などと、本業以外の場で能力開発に挑みたいという声もあったという。
都内企業で人事労務を担当する40代女性のAさんは、副業を解禁する会社が最近増えている背景には、多くの会社で共通の戦略課題となっている「事業ポートフォリオ変革」があると指摘する。
「会社としては社員に対し、副業を通じて既存の仕事を新しい切り口で見直してもらいたいわけです。いまはどの会社でも、事業構成を強化するために『業務改善による生産性の飛躍的向上』と『収益性の高い新規事業の開発』は喫緊の課題になっていますが、目の前の仕事だけをやっていると、どうしても保守的になってしまう。本業以外の仕事のやり方を知ることで、本業を見直すきっかけにして欲しいという期待があるんです」
「ジョブ型」で伸びなくなった給与を自己責任で埋める
ただしAさんは、副業解禁には、あまり表立って言われないもうひとつの理由があるという。それは、いわゆる「ジョブ型」の労務管理だ。
「いま、年功的要素を廃し、役割や仕事そのものに値札をつけて、その達成度で給与を支払うジョブ型の運用を進める会社が増えています。そうしないと、デジタル人材など会社を変革させるための専門職に高給を提示できず、獲得競争に負けてしまうからです」
ジョブ型が進むと、同期入社の間でも専門性の有無や配属先によって早くから年収格差がついたり、キャリア採用で中途入社した同年齢の社員が自分より遥かに高い給与を得たり、といったことが当たり前になる。
「これまで『管理職になりたくないよ』とごねていた人たちは、責任が重くなるだけで給与は上がらないから、気軽にそんなことが言えたわけです。でもこれからは、マネジメントかスペシャリストにならない限りは、給与が低く抑えられたままで、ずっと横ばいという現象が起こります」
年功給は、仕事の熟練という色合いもあるものの、何より生活給の要素が強かった。しかし、ジョブ型はあくまで仕事に給与が支払われるものであり、ライフステージに見合った給与が得られない人も出てくる。そのギャップを埋めるのが「副業」だというのだ。
「ジョブ型を導入する会社は格差を容認しているので、副業解禁が前提になるはずです。言いにくい話ですが、足りないんだったら自己責任で埋めてくれ、ということ。『副業可』の会社には、そういう思想でやっているところもあるわけです。いまどき『副業不可』で縛り付ける会社なんて古すぎるとは思いますけど、だからといって『副業可の会社は自由な社風』とは限らず、眉唾というか幻想かもしれませんね」