「ジョブ型」で伸びなくなった給与を自己責任で埋める
ただしAさんは、副業解禁には、あまり表立って言われないもうひとつの理由があるという。それは、いわゆる「ジョブ型」の労務管理だ。
「いま、年功的要素を廃し、役割や仕事そのものに値札をつけて、その達成度で給与を支払うジョブ型の運用を進める会社が増えています。そうしないと、デジタル人材など会社を変革させるための専門職に高給を提示できず、獲得競争に負けてしまうからです」
ジョブ型が進むと、同期入社の間でも専門性の有無や配属先によって早くから年収格差がついたり、キャリア採用で中途入社した同年齢の社員が自分より遥かに高い給与を得たり、といったことが当たり前になる。
「これまで『管理職になりたくないよ』とごねていた人たちは、責任が重くなるだけで給与は上がらないから、気軽にそんなことが言えたわけです。でもこれからは、マネジメントかスペシャリストにならない限りは、給与が低く抑えられたままで、ずっと横ばいという現象が起こります」
年功給は、仕事の熟練という色合いもあるものの、何より生活給の要素が強かった。しかし、ジョブ型はあくまで仕事に給与が支払われるものであり、ライフステージに見合った給与が得られない人も出てくる。そのギャップを埋めるのが「副業」だというのだ。
「ジョブ型を導入する会社は格差を容認しているので、副業解禁が前提になるはずです。言いにくい話ですが、足りないんだったら自己責任で埋めてくれ、ということ。『副業可』の会社には、そういう思想でやっているところもあるわけです。いまどき『副業不可』で縛り付ける会社なんて古すぎるとは思いますけど、だからといって『副業可の会社は自由な社風』とは限らず、眉唾というか幻想かもしれませんね」