「宝くじ」で確率の面白さを知ってほしい
J‐CASTニュースBiz編集部は篠原拓也さんにさらに詳しく話を聞いた。
――毎年、いろいろなジャンボ宝くじ発売の前に、研究リポートを発表しているのはなぜでしょうか。「宝くじ」がよほど好きなのですか。
篠原拓也さん 大好きです。ジャンボ宝くじは毎回買っています。ただ、研究している割には当たらず、最近では7等が一度当たったきりですね(笑)。
宝くじのリポートを発表しているのは、多くの人に確率のことをぜひ知ってもらい、興味を持ってほしいからです。高校の数学で習ったきりになっている人が多いのではないでしょうか。
世の中のことは、「イエス」か「ノー」が二者択一ばかりではありません。「7割賛成だが、3割反対だ」というグレーゾーンのことが多くあるでしょう。確率の世界がまさにそれで、その最もわかりやすい例で、みんなの関心が高いのが宝くじだからです。
――私が高校で確率を最初に教わった時、数学の教師が「このクラスの中に誕生日が同じ人がいる確率は100%だ」と言って驚いたものです。1年が365日で、誕生日は365通り。ところが、クラスの人数は約50人ですから、偶然としても100%はあり得ないと思いました。
すると教師は「1月生まれの人、手を挙げて」と、順番に生まれた日を言わせることを続けました。5月生まれのグループでひと組、10月生まれのグループでもうひと組、誕生日の一致が出て、「おー!」とクラス中がどよめきました。
篠原拓也さん その数学の教師はいい先生ですね。今のような話が、確率の面白いところです。1クラスに23人いれば、同じ誕生日の人がいる確率は50%を超えてきます。
――宝くじで1等に当たる確率は、今回のジャンボの場合、0.00001%。つまり、1000万人に1人の確率です。それなのになぜ、人々は暑い中、人気の売り場に行列を作ってまで宝くじを買おうとするのでしょうか。
篠原拓也さん 夢とお金がからむと人間は真剣になります。確率が絶対にゼロではないというところがポイントで、「ひょっとしたら、当たるかもしれない!」と思わせる魅力が宝くじにあります。また、「買わなければ、当たらない!」ことも真実です。
人間心理として、確率が高い場合は過小評価して、低い場合は過大評価するという行動傾向があります。これは、心理学と経済学をミックスした行動経済学の分野で言われている「プロスペクト理論」です。
たとえば、天気予報で降水確率が「40%」と報道されると、肌感覚での確率とだいたい一致しますが、降水確率が「70%」と報道されると、「まあ、大丈夫だろう」と甘く考えて傘を持たない人がけっこう出てきます。確率を過小評価するためです。