月曜日、血相を変えた部下がやってきた 大問題が発生「100万人以上会員のメルマガが配信されていません!」

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   上司の言葉がけひとつで、モチベーションが高まった経験はありませんか?

   実際のエピソードや感動的なエピソードを取り上げ、人材育成支援企業FeelWorks代表の前川孝雄さんが「上司力」を発揮するヒントを解説していきます。

   今回は、若手部下の大失敗に青ざめて、緊急報告のため役員室に駆け込んだ上司が体験した、驚きのエピソードです。

  • 「上司力」を発揮するヒントとは
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順風満帆のチームに激震が!

   大手通信販売企業に勤めるSさんは、100万人以上の会員向けメールマガジンの編集と配信を担当する30歳台半ばの管理職です。

   Sさんがマネジメントするチームが週に数回、顧客向けに定期配信する主力コンテンツはいずれも好評で、ここ数年で十数万人の新規読者を獲得するほど。

   今期はユーザー登録も大幅に伸び、掲載記事のクリック数や広告商品へのアクセスも増加傾向。順風満帆で、チーム全体が高揚していました。

「よし、この調子なら、今期も目標越えの成果達成だ! みんな、今週もアクセル全開でいくぞ!」(Sさん)

   Sさんは、毎週のようにメンバーたちを鼓舞するように声をかけ、チームを盛り立てていました。

   そんなある週明けの月曜日のこと、Sさんが出社してデスクに着くや否や...コンテンツ配信担当リーダーのOさんが血相を変えてやってきました。

「おはようございます! ご出社早々で恐縮です。実は、たいへんな問題が発生しまして...。」(Oさん)
「どうした...朝からそんなに慌てて?」(Sさん)
「昨日配信予定だったニュースマガジンの送信が、滞っておりまして...」(Oさん)
「えっ、何だって! 会員の皆様に届いていないってこと? それって、一体どういうこと?!」(Sさん)
「今、原因を調べています。システム障害なのか、他に問題があったのか...。もう少しお待ちください...」(Oさん)

   SさんとОさんの緊迫したやり取りを聞いていたチーム全体に、激震が走りました。

   メンバーたちはざわつくどころか、じっとこわばった顔を見合わせるばかり。みんな、ことのあまりもの重大さに、影響の大きさを測りかねていたのです。

配信モレの原因はケアレスミス?!

「いや~それは困ったな! ちょうど周年記念日にぶつけた大型セール・キャンペーン開始のお知らせ号だからな~。特別に協力をお願いした関係先や広告主にも、社内の関係部署の皆さんにも早急に連絡してお詫びしなければ。会員読者の皆さんにも、どうお詫び告知すべきか。うーん、事後対策をどうするかだな...」(Sさん)
「私のほうで、至急、問題の発生状況と対処項目と対応先リストを書き出したメモを作成します。それをもとに、打ち合わせをお願いします」(Oさん)
「そうだな。大至急、準備を進めてくれるかな! 急いで担当役員のAさんにも報告を上げなければならないしな」(Sさん)
「え、そこまで必要なんですね...」(Oさん)
「ああ、こんな重大事案は、課長の僕のレベルだけで済む問題じゃあないからね...」(Sさん)
「わ、わかりました。急いで準備いたします」(Oさん)

   いつも冷静なOさんの声も、さすがに震えています。

   しばらくの後、Sさんのデスク脇でOさんが対応メモを説明していると、実務担当のTさんが青ざめた顔でやってきました。

「お打ち合わせ中に、失礼します! 配信モレの原因ですが...システム障害ではなく、私たちのほうでの単純なセットミスでした。たいへん申し訳ありません!!」(Tさん)
「えっ! そうなのか~。ケアレスミスか、参ったな...。チェック体制が利かなかったわけだな。うーん」(Sさん)
「本当に申し訳ありません! 全てリーダーの私の責任です。マニュアル通りに私がダブルチェックを行っていれば、こうした事態は防げました...」(Oさん)
「うーん。そうだな...。それでもシステムに問題がないなら、明日のメルマガ配信は大丈夫だな...」(Sさん)

大叱責を覚悟で、役員室へ...

   Sさんは、若干安堵はしたものの、今回の不祥事で関係先に多大な迷惑が及び、自社収益に甚大な影響が出て、信用問題にもつながることから、自分の監督責任が厳しく問われることを覚悟しました。

   Sさんは、OさんとTさんとの緊急ミーティングで状況を詳しく聴き取り、対処方法についても詰めました。スピードが大事なため、対応に抜けがないか2人にも確認をしながら、担当役員の秘書チームを通じて、至急の面談予約を取りつけました。

   そして、毎週月曜日定例の役員会議を終えたばかりの、担当役員の部屋フロアに向かいました。

   秘書の方に挨拶をしたあと、役員室の前で待機。示された椅子に座る心の余裕もなく、待ち時間1分が1時間のようにも感じられる緊張感で、立ち尽くしていました。

   時間になると、Sさんは青ざめた面持ちで役員室のドアをノックしました。

「おはようございます! お忙しい時間に急な報告で、失礼いたします!」(Sさん)
「ああ、おはよう。...朝から血相を変えて、いったい、どうしたのかね?」(取締役のAさん)
「は、はい! たいへん申し訳ございません! 実は、昨夕配信予定だった会員向けメールマガジンがシステム停止状態となっており、送られていませんでした。昨日は日曜だったこともあり、今朝になって事態が判明しました。状況をお話ししますと...」(Sさん)

   Sさんは、Aさんに対し、問題の状況と原因、社内外への影響の広がりと対処方針について、一通り説明した上で、ひどく落ち込んだ表情で謝罪を述べました。

「誠に申し訳ございませんでした! 担当メンバーのケアレスミスですから、すべて私の管理不行き届きの結果です。責任は私にあります」(Sさん)

   黒革のチェアに深々と腰かけて、役員室の重厚なデスクに対峙しながら報告を聞くあいだ、役員のAさんは一言も語らず、じっとSさんを見つめています。

   簡易な報告書をもとに第一報を話し終えたSさんは、しばらく頭を深々と下げたまま生きた心地もなく、厳しいAさんからの叱責の言葉を待っていました。

   <「どのような懲戒処分もお受けします」 部下の「大失敗」で役員室に謝罪へ...そこで受けた「衝撃の言葉」>の記事に続きます。

(紹介するエピソードは実際にあったものですが、プライバシー等に配慮し一部変更を加えています。)



【筆者プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお):株式会社FeelWorks代表取締役。青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授。人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業のFeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。
近著に、『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)、『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)、『Z世代の早期離職は上司力で激減できる!』(FeelWorks、2024年4月)など。

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