中堅・ベテラン社員「待遇と評価」満足度が高い企業ランキング...上昇した企業どこ? 成果を反映する給与と公正さ

   学生の「売り手市場」の傾向が強まるなか、人材確保のために新卒社員の初任給を大幅に引き上げるなど、若手優遇の企業が増えている。

   悔しい思いをしているミドル層のために、就職・転職のためのジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワーク(東京都渋谷区)が2024年6月20日、「中堅・ベテラン社員の『待遇と評価』の満足度が上昇した企業ランキング」を発表した。

   若手だけでなく、30代以上も納得する給与と評価制度を持っている企業の特徴とは? 調査担当者に聞いた。

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システム・ソフト関連会社が、上位20社中7社占める

   OpenWorkは、社会人の会員ユーザーが自分の勤め先の企業や官公庁など職場の情報を投稿する国内最大規模のクチコミサイト。会員数は約645万人(2024年5月末時点)という。企業の評価を「待遇面の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」「社員の相互尊重」「20代成長環境」などの8つの指標を5段階で評価している。

   今回の調査では、30代・40代・50代の社員を対象に「待遇面の満足度」と「人事評価の適正感」(各5点万点)の合計スコアを集計。2019年との2023年の比較でスコアが上昇した企業をランキング化した(図表)。

   その結果、1位に電通のシンクタンクの電通総研、2位にソニーグループの半導体部門ソニーセミコンダクタソリューションズ、3位に英国に本拠を置くコンサル会社EYストラテジー・アンド・コンサルティング、4位に米国のクレジットカード大手アメリカン・エキスプレス・ジャパン、5位にソニーグループの持ち株会社ソニー。

   6位に人材紹介サービスのジェイエイシーリクルートメント、7位に米国に本拠を置く巨大IT企業の日本マイクロソフト、8位にNTTデータグループのコンサル会社クニエ、9位に総合商社の三井物産、10位にメディア・インターネット広告のサイバーエージェントとなった。

(図表)中堅・ベテラン社員の「待遇と評価」の満足度が上昇した企業ランキング(オープンワーク作成)
(図表)中堅・ベテラン社員の「待遇と評価」の満足度が上昇した企業ランキング(オープンワーク作成)

   上位20社のうち「Sler(システム開発)、ソフト開発、システム運用」業界が最多の7社ランクインした。上位に入った企業の共通点は、成果が反映される給与制度や公平さを保つ仕組み、そして上司からを充実したサポートやフィードバックを受けられることも納得感の高い評価を生んでいるという。

成果が反映される給与と、公平な評価がポイント

   J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったオープンワーク広報担当者に話を聞いた。

――とかく若手が優遇されるなか、30代以上が納得するには自分の働きに見合った給与と公平な評価制度だと思いますが、それがクチコミで表れているのはどんな内容ですか。

広報担当者 リポートで紹介した「成果が反映される給与制度」「公平さを保つ仕組み」といった特徴は、回答者の年代を問わず当てはまることで、若手社員からも評価されるポイントとも考えられます。特に、中堅・ベテラン層の声として多いクチコミを紹介します。

電通総研「基本給よりも賞与や手当てが多いようだ。半期毎の目標管理制度を取り入れている。難易度や評価については調整会議を開催し、部長による差異をできる限り減らそうとしている。概ね公平公正な評価が下されていると思う」(マネージャー、男性)

アメリカン・エキスプレス・ジャパン「いわゆる年俸制で評価が高いと月の給料が上がっていく。自分次第なのでやる気があればどんどん上がっていくし、インセンティブもある。成績上位の人はそれなりに貰えるが成績下位になるとインセンティブはなし。
良くも悪くも努力した人だけが報われる。しかし、上司からのサポートなども徹底しており、毎月面談などしっかりしているため、自分の弱点を見つけ出し改善にむけて一緒になって考えてくれる。(評価制度は)決まった指標がありそれをどれだけクリアしたかで決まってくる」(コールセンター、男性)

ソニーセミコンダクタソリューションズ「年度始めに直属の上司とマンツーマンで面談し、今年度の目標を設定する。年度末にその目標に対してどれだけアプローチ出来たかを基準に、全体的な評価を下すという方式である。そのため、一見して評価の妥当性は上司に依存する割合が多いように思われるが、最終的な評価は複数の上司や定量的な実績を元に算出される」(開発設計、男性)

EYストラテジー・アンド・コンサルティング「上司次第ではあるものの、評価面談でのフィードバックは充実しており、加えて評価に不服の場合には(いちおう)他の上司を通した申立ての制度があるため、一定の納得感はある」(コンサルティング、男性)

みんなが納得する「コンピテンシー評価」とは

――上位20社中、「Sier、ソフト開発、システム運用」が7社入ったとありますが、こうした企業の共通点は何でしょうか。

広報担当者 こうした業界のクチコミからは、仕事で高いパフォーマンスを発揮する人材に共通する行動特性をもとに設計した「コンピテンシー評価」を導入していることが目につきます。

これは、仕事で高いパフォーマンスを発揮する人材に共通する行動特性(コンピテンシー)をもとに設計した基準で行う人事評価です。

たとえば、「業務を効率的に構築できるか」「人と親密な関係を築けるか」「人の話を傾聴できるか」「チームの一体感を醸成できるか」などの項目でみます。曖昧に評価しがちな業務プロセスを公平に評価できる、納得度が上がります。

もう1つ、自己評価と上司の評価にズレがないようすり合わせの機会を評価する声がありました。また、上司はもちろん、一緒に仕事をするメンバーからのフィードバックも重視していることがうかがえました。こんなクチコミです。

東京海上日動システムズ「コンピテンシー評価という制度を導入しており、しっかり面談で自分の評価を課長と年に3回擦り合わせられる」(ITエンジニア、男性)

クニエ「コンピテンシーの達成を重視しており、数字にこだわった評価にしていないことが特徴。業界によっては数字が出にくい場合があるが、コンピテンシーが達成できていれば昇進することは可能となる」(コンサルタント、男性)

日本マイクロソフト「年収における変動給が定性・定量評価がそれぞれ設定されており、職種によってその比率が異なります。定量はもちろん、定性についても残したインパクト次第で100%を超える評価をもらえるので、やればやっただけ評価してもらえる感覚があります」(エンジニア、男性)

IBM「マネージャーとの1on1をベースとした評価制度であり、普段の活動の様子も理解してくれているため、非常にフラットな評価制度だと考える」(営業、男性)

アバナード「上からの評価だけではなく、プロジェクトメンバーからのフィードバッグに重きを置くため、上司のお気に入りだからといった理由で評価されることはない」(コンサルタント、男性)

「他者への貢献」重視する日本マイクロソフト

――今回の調査を通じて、中堅・ベテランを大事にするためには、こういう企業であってほしいという願いがありますか。

広報担当者 定性面での成果を重視している企業が見られたことが印象的でした。中堅・ベテランの社員ほどチームワークやリーダーシップ、スキルや経験を若手に伝えるコミュニケーション力などが求められるため、こうした定量評価だけでは測れない成果を評価する仕組みは重要だと感じました。

特に、日本マイクロソフトのクチコミに、「(評価制度で)他者への貢献を重視している」といったコメントが頻繁に見られた点が興味深かったです。

具体的には、「会社の評価制度でもチーム内のメンバーに対してどれだけ貢献できたかという指標もある」「他者貢献がKPI(重要業績評価指標)の1つとなっており、協力的な社員が多い」などの声が見られ、チームで成果を上げる意識が組織に根付いていることがうかがえました。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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