「街の歯医者さん」倒産ラッシュ 「コンビニより数が多い」だけに患者の奪い合いに...生き残るには?

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歯科医院の将来像、経営ビジョンが見えにくくなっている

――ほかの一般診療クリニックでも後継者問題が深刻ですが、歯科医院の場合も後継者は子どもやその配偶者といった血縁者を求めるのでしょうか。

谷澤暁さん 後継者について考える時に真っ先に浮かぶのが血縁者ですが、後継者難に悩む歯科医院は少なくないようです。倒産以外では、休廃業・解散した歯科診療所は2023年に119件あり、2018年(111件)以来、5年ぶりに110件を超えました。

ただ、背景には後継者問題も影響していますが、一番の問題は歯科医院の将来像、経営ビジョンが見えにくくなっていることが大きいと思います。

――それはどういうことですか。ズバリ、歯科医院の勝ち組と負け組をわける要因、サービスの違いはなんでしょうか。

谷澤暁さん 競合から患者数の減少に見舞われるなか、コロナ禍の通院控えが追い打ちをかけ、事業継続を断念したケースが散見されました。

患者数を確保できている診療所は、インプラントや矯正、審美歯科などの自由診療の分野でサービス領域を広げたり、アルバイトを含めて歯科医を増やして待ち時間を少なくしたり、webを活用したマーケティングで他院と差別化を図ったりしています。

これから経営環境の悪化でも耐えうる資産背景や経営感覚のほか、財務内容に力を注いでいたかを問われてきます。甘い計画による開業は、厳しい経営に直面する可能性が高まっています。

――歯科医としてのスキルだけではなく、経営者としての才覚が問われるわけですね。

谷澤暁さん そのとおりです。たとえば、東京都豊島区の歯科矯正歯科クリニックの場合、新規開設やM&A(合併・買収)を通じてクリニック数を伸ばして業容を拡大しました。

しかし、急激なクリニック数の増加に伴い、資金需要が活発化するなか、コロナ禍に見舞われて2022年に5億5000万円以上の赤字を計上しました。

資金繰りの悪化から2023年に民事再生法の適用を申請しましたが、さらに整理の一環で、関連会社として歯科医院を経営する4法人が2024年3月、破産開始決定を受けています。
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