歯科医の多くが独立開業を目指す切実な理由
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なった東京商工リサーチ情報本部情報部の谷澤暁(たにざわ・あきら)さんに話を聞いた。
――そもそもですが、過当競争の原因である「コンビニよりも歯科医院が多い」理由とは何でしょうか。リポートでは「歯科医師の独立志向が高い」と指摘していますが、コンビニより多い理由に関係ありますか。
谷澤暁さん 大学病院や総合病院の歯科医は枠が少なく、厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、2022年時点で歯科医10万5267人のうち、85.7%にあたる9万257人が診療所に勤務しています。
また、同省の「医療経済実態調査」(2023年)では、歯科医の年収は病院勤務医が1249万円に対し、診療所の院長の下で働く勤務医は約645万円と倍近い差があります。
このため、病院の勤務医になれない多くの歯科医が独立開業を目指す傾向が強く、開業歯科医が歯科医師全体の半数を超える結果になっています。
もう1つ重要なことは、歯科医院の場合、開業に要する資金は一般的に最低5000万円ほどと言われ、病院開業に比べ少なくて済みます。こうした面も独立を促す背景になっていると思われます。
――なるほど。ところで、「人口減少が患者減少につながる」と指摘していますが、入れ歯や歯周病などの口腔ケアが必要な高齢者のボリュームが増え続けていますから、ここしばらくは安泰なのではないでしょうか。
谷澤暁さん その指摘は、10年単位でみた中長期的な将来見通しです。日本歯科医師会の公表資料では、80歳以上の高齢者では歯科医院への通院者数が減少する傾向がみられます。
人口ピラミッドのボリュームゾーンを占める第一次ベビーブーム世代が75歳以上に達しており、通院困難の高齢者が増えている可能性もあります。
たしかに、高齢者ゾーンは膨らみ、その分野を取り込めると患者数は増えますが、高齢者の医療費負担は決して小さくなく、単純な計算通りにはならないと思います。