今年(2024年)の新入社員の初任給平均額は大学卒が22万5457円、高校卒が18万8168円で、1961年以来最高の額であることが、人事労務分野の情報機関である産労総合研究所(東京都千代田区)の調査でわかった。
同研究所が2024年7月5日に発表した「2024年度 決定初任給調査」によると、初任給を引き上げた企業も過去最高の75.6%に達した。
なぜ、これほど初任給の「景気」がよいのか、調査担当者に聞いた。
夏のボーナスは、大学卒9万4112円、高校卒7万5076円
産労総合研究所の初任給調査は、1961年から毎年行っている。今回調査は、会員企業および上場企業から一定の方法で抽出した3000社に対し、2024年4月に調査票を郵送、回答を得た369社が対象だ。
2024年4月入社者の初任給を「引き上げた」企業は、前回調査(2023年度)から7.5ポイント増の75.6%に上った。同様の問いを設けた1997年度調査以降で最も高く、27年ぶりに7割を超えた。「据え置いた」は16.5%(同28.9%)、「引き下げた」は前回に続きゼロだった。【図表1】。
学歴や職種、コース(総合職と一般職、広域勤務と地域限定勤務など)別や初任給額の水準は【図表2】のとおり。
大学卒(一律)で平均22万5457円(前年比3.85%増)、高校卒(一律)で平均18万8168円(同4.58%増)だった。この支給額は、1961年の調査開始以来最高額だ。
また、付帯調査として新入社員の夏のボーナス支給状況も聞いた。新入社員に「一定額(寸志等)なども含め、何らかの夏季賞与を支給する」企業は77.5%、「支給しない」は12.2%だった。平均支給額は、大学卒が9万4112円、高校卒が7万5076円だった【図表3】。
深刻な人材不足が理由、大企業ほど初任給アップ
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なった産労総合研究所の担当者に話を聞いた。
――1961年の調査開始以来、63年ぶりの最高額の初任給となった背景は何でしょうか。
担当者 かつてない深刻な人材不足が理由です。初任給を上げた理由に「人材を確保するため」と回答した企業は、規模が大きいほど多く、従業員が1000人以上の企業では約84%に達しています。
厚生労働省や連合の調査で、今年の春闘の賃上げ率が歴史的に高い水準になりましたが、それが初任給にも反映されたかたちです。特に、製造業に多いのが特徴で、初任給を引き上げた企業は79.8%にのぼり、非製造業より10ポイント近く上回っています。
――夏のボーナスを支給する企業の割合も、史上最高レベルなのでしょうか。
担当者 いえ、それは違います。今年は支給する企業は77.5%で、前年(2022年度)の86.1%より9ポイント近く下がりました。夏のボーナスはあくまで付帯調査なので、毎年回答する企業数にバラツキがあります。今年は中小企業の回答数が多かったのが特徴です。分母にボーナスを出せない企業が多かったため、割合が減少しました。
最低賃金の大幅アップが、高校卒新入社員に恩恵
――今年の初任給調査で、特に目立った点はなんですか。
担当者 初任給を引き上げる従業員の割合を主な学歴別にみると、大学卒と高校卒の間でギャップが広がった点です。【図表2】を見ても、大学卒(一律)は唯一3%台(3.85%増)ですが、高校卒はみな4%~5%台と大学卒より高い水準です。
興味深いのは、規模別にみると、大学卒(一律)は「1000人以上」が24万1082円(5.50%増)、「300~999人」が22万9423円(4.13%増)、「299人以下」が21万8118円(3.13%増)と、企業の規模の大小によって格差が広がっています。
ところが、高校卒は「1000人以上」が19万2686円(5.67%増)、「300~999人」が19万2392円(4.69%増)、「299人以下」が18万3698円(4.03%増)と、それほど格差が広がらず、一様に高い水準になっています。
――どういうことでしょうか。
担当者 つまり、高校卒の初任給が全体的に高くなっているということです。これは、最低賃金の大幅な引き上げが決まったことが影響しています。今年春から高校生の初任給を最低賃金より上にしないと、最低賃金法違反に問われることになります。
高校卒の新入社員にとってはありがたい傾向ですが、引き上げざるを得ない中小企業にとっては、大きな負担になるでしょう。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)