会社に対する社員の「愛着」や「思い入れ」を指す「エンゲージメント」。この度合いを、サーベイ(調査)を通じて数値化し、「エンゲージメントスコア」として会社の数値目標とする会社が増えている。
たとえばNECは、「2025中期経営計画」の数値目標として「エンゲージメントスコア50%」を掲げている。「仕事に対する情熱」と「会社に対する愛着」が高まった社員の割合を、2020年度の25%から2025年度には半分にまで高めていこうというのだ。
スコアの急落受けて「犯人探しが始まった」会社も
そんな「エンゲージメント」を測定するサーベイ(調査)の実態について、バヅクリが会社員330人を対象にアンケートを行っている。
これまで働いた会社や組織で、働きやすさや組織への満足度等に関する社内アンケートに回答したことがあるか尋ねたところ、「定期的に回答したことがある」が28.6%、定期的ではないが「過去に回答したことがある」が20.1%だったという。
さらに、回答経験のある人に「社内アンケートの集計結果を、社内に開示もしくはフィードバックなどで共有してほしいか」と尋ねたところ、78.3%が「してほしい」と回答した。
「アンケートの集計結果は開示されたか」という質問はなかったが、社内アンケートの集計結果をもとに、社内やチーム内で議論を実施したことがあるかという問いには「ある」と答えた人が47.7%。つまり「議論していない」人が過半数ということになる。
実施された集計結果が開示されず、それをもとに議論も行われていないとしたら、何のためにどういう使われ方をしているのか。ネット上にはサーベイの存在意義そのものを疑うような書き込みも見える
「社内のエンゲージメント調査(中略)最近の期待と不満込みで正直に回答したら、結果が急落した後に『誰が原因だ?君か?みんなにも聞いてみよう』って犯人探しが始まってた」
「うちはアンケート結果を会社に不満のある人間のあぶり出しに使われている。結果は当然非公開。誰も本音を書きませんよ」
「眠れないと答えているのに誰も助けてくれない」
40代女性のAさんが勤める都内のIT企業でも、エンゲージメントサーベイは毎月行われている。しかし、その結果は公表されていない。
「サーベイの項目には、仕事に満足しているか、人間関係に問題はないか、会社組織に満足しているか、といった内容で、会社がこの数字を上げようとしているんだろうな、ということは感じます。でも集計結果は、全社でも部署ごとでも見たことがないですね」
我が社への入社を友人や知人に紹介できるか、といった項目もあるが、Aさんは10点満点で4点以上をつけたことがない。
「業績が伸びてないし、回復のための戦略もない。将来性のない会社に友人や知人を引き込めないです。たぶん他の社員も同じことを考えているから、集計値もかなりヤバいことになっているでしょうね。会社が公表できないもの無理はないですが、改善のための対策も打っていないのに毎月同じことを尋ねる意味が分かりません」
また、サーベイの項目に「よく眠れているか」「体調不良はないか」といった項目があるにもかかわらず、異常値が出ても誰もケアしていなかったことが判明。サーベイに対する信頼は地に落ちてしまった。
「リモートワークで人知れず鬱になって会社を辞めた先輩がいたんですが、去り際に『サーベイに眠れない、体調が悪いと答え続けていたのに、誰も助けてくれなかった。ショックだった』と言っていてビックリしました。もしかして結果を統計処理だけして、個別の中身は見ていなかったのかって。これじゃダメですよ」