大学3年生の8割「就活開始は2年生以前がいい」 早すぎでは?の疑問に「早くからキャリア形成考えると、メリット多い」/マイナビ服部幸佑さん

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

   大学3年生になったばかりの2026年卒就活生の8割が、キャリア形成活動は「大学2年生以前に始めておくとよい」と考えていることがわかった。

   就職情報サイトのマイナビ(東京都千代田区)が2024年6月17日に発表した「マイナビ2026年卒 大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(5月)」によると、85%の学生が大学3年になった時点で「もう、学生生活が半分終わってしまった」と感じている。

   こんなに早く就活が始まったいいのか? 調査をまとめたマイナビの服部幸佑さんに聞いた。

  • インターンシップに参加、プレゼンの練習をする学生(写真はイメージ)
    インターンシップに参加、プレゼンの練習をする学生(写真はイメージ)
  • 服部幸佑さん(本人提供)
    服部幸佑さん(本人提供)
  • インターンシップに参加、プレゼンの練習をする学生(写真はイメージ)
  • 服部幸佑さん(本人提供)

「勉強を頑張りたいのに、就活が本格化して辛い」

   マイナビの調査(2024年5月20日~31日)は、2026年3月卒業見込みの全国大学3年生、大学院1年生5290人(文系男子811人、文系女子2349人、理系男子1057人、理系女子1073人)が対象だ。

   今年5月のインターンシップ・仕事体験に申し込んだかどうかを聞くと、約6割(59.2%)が申し込んでいた。4月(59.2%)より15.1ポイント増加した【図表1】。

(図表1)単月でインターシップ・仕事体験に申し込んだ割合の推移(マイナビ作成)
(図表1)単月でインターシップ・仕事体験に申し込んだ割合の推移(マイナビ作成)

   先輩である2024年卒、2025年卒の6月実績が8割に達していたことを踏まえると、今後サマーインターンの時期に向けて申し込みを行う学生が増えることが予想される。

   早まっている就活について、大学3年生はどう考えているのか。85.0%の学生が大学3年生時点の心境として、学生生活が「もう半分終わってしまった」という焦りを感じており、フリーコメントをみると、こんな意見が相次いだ。

「勉強を頑張りたいものの、就活が大学3年で本格化してきて少し辛い気持ちがある。もう少し時間に余裕がほしい。忙しくてなかなか企業研究に時間が割けない」(文系女子)
「あと2年で社会に出る不安。やっていけるのか。自分に合った会社を見つけられるのか。受かるのか、という不安が大きいです」(文系女子)
「半分も終わってしまって就活準備ができていないので、だいぶ慌てています」(理系男子)

   そこで、いつから就職活動(キャリア形成活動)を始めたらよいかを聞くと、「大学2年から」が最も多く、約4割(39.7%)に達した。「高校生以前」「大学1年」「大学2年」を合わせ、約8割(76.5%)が「インターンシップなどが本格化する大学3年より前に開始するのがよい」と答えたのだった【図表2】。

(図表2)キャリア形成を開始する時期はいつからがよいと思うか(マイナビ作成)
(図表2)キャリア形成を開始する時期はいつからがよいと思うか(マイナビ作成)

就職活動の前に、自分のキャリア感を磨くとよい

   こうした早まる就職活動をどう考えたらよいのか。J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったマイナビのキャリアリサーチラボ研究員服部幸佑さんに話を聞いた。

――近年、大学生の就活が非常に早まっていますが、2026年卒(大学3年生)がいつごろから就職活動を開始したのか、わかるデータがありますか。

服部幸佑さん 26年卒はまだ就職活動が始まっていないため、内々定率などのデータは2024年7月5日現在ありません。しかし、1年先輩の25年卒が就職活動を開始した3月1日時点での内々定率が34.3%で、前年の18.1%より16.2ポイントも高いので、26年卒もより内々定率が高まる可能性があります。

学生が「就職活動」と捉えている活動には2種類あります。選考に参加し合否の結果を得る「就職活動」と、キャリア観を醸成するためにインターンシップ・仕事体験などに参加する「キャリア形成活動」です。インターンシップ・仕事体験でも自己分析や企業分析をすることがあり「就職活動準備」ととらえている学生もいます。

インターンシップ・仕事体験に初めて参加した時期を26年卒の学生に聞いたところ、まだ2年生の2023年12月以前が最も多く10.9%となっています。25年卒は2023年8月の29.5%が最多でしたので、これから授業が休みになる夏季休暇に向けて参加率が上がってくる見込みです。

――大学3年生の76%が「キャリア形成活動」(就職活動)を2年生より前に始めたほうがいい、と考えていることがショックです。こうした就活がどんどん早まる現実についてはどう考えていますか。

服部幸佑さん 「選考に参加し、合否の結果を得る就職活動」を行う前に、「キャリア観醸成のためのキャリア形成活動」を行うことは必要です。

早い時期から、自身の適職を見つけるために「キャリア形成活動」を行うことはいいことであり、土台となるキャリア観の醸成や職業観が整っていないと、自分の強みや適職が分からないまま実際の就職活動を迎えることになってします。

インターンシップ・仕事体験への参加や自己分析などを通じてキャリア形成ができた状態で就職活動に臨むことで、入社後のミスマッチを減らすことができます。学生が早期から自身のキャリアについて考えようとしていることは良い傾向だと捉えています。

――2025年卒就活生(現在の大学4年生)から新制度として「インターンシップ等のキャリア形成支援プログラム」が始まりました。これには、一部で企業が選考の対象にしてもよいという内容も含まれています。
このことが、早い段階からインターンシップ・仕事体験に申し込む学生が増えている要因になっているのでしょうか。

服部幸佑さん 25年卒から三省合意によって特定の条件を満たしたプログラムは、選考が始まる6月以降に限り、学生の情報を採用選考に活用してもよいというルールが定められました。

25年卒のインターンシップ・仕事体験の累計参加率は85.7%で、調査を開始した2014年卒以来最高の数値になりました。タイミング的に制度改正を受けての増加とも見てとれますが、一方で、大学生のインターンシップ・仕事体験への関心が年々高くなっていますから、その結果かもしれません。

仕事の関心が高まると、何のために勉強するのかわかってくる

――なるほど。今回の調査をみると、3年の4月に44%、5月に59%も申し込んでいます。ということは、2年生の段階でかなり企業調査の準備をしなければいけないということでしょうか。

服部幸佑さん 学生によって状況はさまざまありますので、一概にこうしなければいけないということはありません。また、プログラムもさまざまな内容・目的のものがありますので、自分の準備度合いに合ったものに参加いただければいいと思います。

ただ、早く動いてさまざまなプログラムに参加した分、自身のキャリア観も醸成されます。結果として、自身のキャリアイメージにマッチした業界や企業の理解と見極めが早く進むことができるでしょう。

就職活動が始まる以前の自己分析、仕事研究、自身のキャリアプランをイメージすることなどの活動は、キャリア観の醸成につながることなので、学業や大学生活との両立を踏まえながら、自身の興味・関心に応じて行ってほしいと思います。

――インターンシップ・仕事体験は学生のキャリア形成にどんな影響を与えていますか。そのメリット&デメリットが分かれば教えてください。

服部幸佑さん 土台となるキャリア観の醸成や職業観が整っていないと、自分の強みや適職が分からないまま就職活動を始めてしまい、入社後のミスマッチにつながりかねません。

マイナビは、学生が選ぶ優れた企業の「キャリアデザインプログラムアワード」を後援しているのですが、その調査結果からも、低学年のうちからインターンシップ・仕事体験などに参加すると、大学の勉強の学習意欲が向上することが示唆されています。将来の職業選択のためだけでなく、学業活動を促進する可能性が高いことがわかっています。

――つまり、将来の仕事への関心が高まると、何のために勉強するのかという理由もわかってくるということですか。

服部幸佑さん そういうメリットもあるということです。25年卒の学生にインターンシップ・仕事体験に参加して成長したと感じる部分を聞いたところ、30.2%が「主体性が伸びた」と回答しています。だから、キャリア観醸成や学習意欲への良い影響だけでなく、社会人基礎力の面でも非常によい影響があると思います。

大事なのは、最終的に納得したファーストキャリアに出会えること

――デメリットはありませんか。

服部幸佑さん 注意してもらいたい点として、スケジュールによっては学業との両立が難しくなる可能性があります。

企業には長期休みなどに開催いただくよう学生に配慮いただきたいし、学生もWEB開催のプログラムを活用するなど参加しやすいものを選んでほしいと思います。

――「インターンシップ・仕事体験はこう活用するといい」という学生に対する前向きのアドバイスをお願いします。

服部幸佑さん インターンシップ・仕事体験は、実際に企業で働いている社会人と接点を持つことができる貴重な機会です。

一方、参加さえすればよいというものではなく、自身の目的や準備度合いにあったプログラムを選ばないと、ただ参加しただけで何も得られなかったということにもなりかねません。

初めはオープン・カンパニーなどの短期間(1日~2日)のものから参加をし、自身の仕事に関する知識や経験を広げてから、長期(5日~)のものに挑戦してみるのがいいのではないでしょうか。

――それにしても、早くから就活に時間がとられる学生の声には胸がいたみます。

服部幸佑さん 周りの学生が早くから参加しているのを見ると、学業ややりたいこととの両立が難しく、焦るかもしれませんが、焦って行動を起こす必要はないと思います。

インターンシップ・仕事体験はあくまで自身の仕事観を広げるためのものであり、参加が強制されているわけではありません。大事なのは、最終的に納得したファーストキャリアに出会えることです。自身のペースで頑張ってほしいと思います。

学生時代にしかできないことがある。マイペースで頑張ってほしい

――今回の調査で特に強調しておきたいことがありますか。

服部幸佑さん 3年生が始まったばかりの5月に、85.0%の学生が「学生生活がもう半分終わった」と焦りを感じていることに、驚きました。

3年生は、部活動なら主体的に活躍していく時期だし、理系学生なら研究が始まっていく時期かと思います。そんな中で自身の将来のことも考えなければいけない状況になり、やりたいことと、やらなければいけないことが盛りだくさんで、時間がないと焦る気持ちは非常にわかります。

学生時代にしかできないこともありますので、ぜひ、マイペースで頑張ってほしいと思っています。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)



【プロフィール】
服部 幸佑(はっとり・こうすけ)
株式会社マイナビ キャリアリサーチラボ研究員

転職エージェントの営業を経て、物流に関する分析業務を経験したのち2024年に中途入社。現職では主にインターンシップ・就職活動準備実態に関する調査や大学生の広報活動開始前の活動調査を担当。就活生の早期キャリア形成や企業におけるインターンシップのありかたに関心が高い。

姉妹サイト