KADOKAWAグループが受けたサイバー攻撃による個人情報流出の可能性が話題になる中、VTuberの天羽しろっぷさんが2024年7月2日にXで、個人情報が流出したとして、本名だとする名前を公表した。天羽さんは流出元を名言していないが、KADOKAWAによる流出事案の影響を受けたとみる向きは多い。
こうした情報を発信することで、天羽さん自身に危険は及ばないのか。さらに、一連のサイバー攻撃事件への影響はあるのか。識者の見立てを聞いた。
公表していたのは「偽の本名」、流出したのは「『本当の』本名」
天羽さんはXで、以前本名だとして公表していた名前が、個人情報流出により実は「偽の本名」だったことが明らかになってしまったとして、「真の身バレVtuverになったことをご報告いたします」と発表した。報告文を記載した画像には、今回流出した「本当の」本名と、町名までの住所も記載されている。なお、これは引っ越し済み、つまり今は住んでいない住所だという。
発覚の経緯について
「朝5時にめちゃくちゃ電話かかってくる
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その人から聞くと個人情報が5chやTwitterに流出している
↓
2時間ぐらい考える
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開き直る」
と明かした。
天羽さんの「開き直り」は注目を集め、「もう逆に何がバレてないんだよwwwww」などと面白がる声が寄せられた。
「公表は避けた方が良かった」の声に専門家の見解は
一方で、X上では天羽さんの対応が良くなかったのではとする意見も寄せられた。
KADOKAWAグループは6月8日に「ブラックスーツ」を名乗るハッカー集団によるランサムウェア攻撃を受け、複数のウェブサイトが利用できない状況が続く。7月3日には、社内外の情報漏洩の可能性を発表。漏洩した可能性が高い情報の中には、ドワンゴの全従業員の個人情報や、学校法人角川ドワンゴ学園が運営する通信制高校の一部在校生・卒業生・保護者の個人情報などのほか、ドワンゴが取り引きする一部のクリエイターとの契約書や、楽曲収益化サービスを利用している一部のクリエイターの個人情報も含まれていたとしている。
こうした状況から、天羽さんの個人情報流出もこのサイバー攻撃によるものだと受け止める人が相次いだ。その上で、流出した情報が本物であると認めることで、ほかの流出情報の信ぴょう性があがってしまうため、公表は避けた方が良かったのではとする声も出た。
こうした意見に対して、ITジャーナリストの三上洋さんは、天羽さんは「あくまでも被害者」だと強調する。
「犯人は『ブラックスーツ』ですが、情報を保管していたドワンゴやKADOKAWA側にも責任はあるわけです。そのKADOKAWAを守るために『流出した情報を否定するべきだった』と言われるのはおかしな話です」
被害に遭ったこと自体をネタに
また、天羽さんは本名を公表することはリスクがあるものの、流出したのが本名であることを「認めざるを得なかった」とも指摘する。天羽さんに限らず、配信者やVtuberは身の回りで起きていることすべてをネタにする覚悟で活動しているとして、
「今後もずっと(本名に関して)言われるよりは、被害に遭ってしまったことを受け止めて、それ自体をネタにしたり笑い話にしたりするんだという形でやっていらっしゃると思います」
と公表の背景を推測した。
しかし、本人の公表に乗じて晒し行為を続けたり、攻撃したりといった行為は「犯罪もしくは民事訴訟の対象になる可能性があるため、やるべきではない」と指摘する。
KADOKAWAに求められる補償は
個人情報流出の被害に遭い、SNSや匿名掲示板に個人情報がさらされてしまった場合は、どのような対応が望ましいのか。
三上氏は、まずは削除請求をするべきだと話す。さらに悪質な場合は、弁護士に相談の上、情報開示をし、民事訴訟を行うことになる。今回の場合、流出元であるKADOKAWA側に削除や何らかの補償を求めることが可能だとしている。
さらに三上氏は、6月25日に公表された「ぶいすぽっ!JP オーディション」など3つのVTuberオーディション企画で個人情報が流出した事案を例に挙げる。運営するBrave groupは26日、漏洩対象者が電話番号の変更や引っ越しをする場合、やむを得ず生じた費用と認められる範囲内で補填すると発表した。
「今回の件については、このような対応をニコニコやKADOKAWA側に望みたいと思います」