なぜ「高齢者のカスハラ」は目立つのか 専門家が指摘する複数の問題点

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

シニアに限らずクレームの発生源は「不満」、疲れやストレスが関係することも

   では、なぜシニア層のカスハラが目立って見えるのか。

   池内教授は、クレームの発生源は一言でいうと「不満があるから」だという。では、なぜ不満が生じるのかの源泉については、「期待不一致モデル」によって説明されるとのことだ。「このモデルでは、商品・サービスの品質や性能などが、購入前に"期待"していた水準と相違がある場合、その"差"が不満の源泉になることが示されています」と添える。例えば、「この商品はこのくらいのパフォーマンスがあるだろう」「店員さんはこの程度サポートしてくれるだろう」といった期待が外れた場合だ。

   そして、こうした不満がカスハラにまで発展するには、「疲れやストレス、社会に対する不満など、一時的な状況が絡んでいる場合が多い」という。例えば、たまたま仕事や家事などで疲れていたり、世の中に対する不満が溜まっていたりすると感情の抑制が効かなくなり、カスハラにいたりやすいとのことである。「怒りを抑えるには、相当な心的エネルギーが必要なのですが、ストレスが大きいと集中力や判断力が低下するため、怒りのコントロールが難しくなるのです」と説明する。

   これはシニア層に限らず、年齢に関係なく誰でも起こり得る話だ。

   しかし、シニア層のカスハラが目立つのは(1)シニア層は人口バランス的に多いこと(2)社会への不満や不安を抱えている人が多いこと(3)高齢になるにつれて感情をコントロールしづらくなる傾向にあることなど、複合的な理由があると池内教授は指摘する。

   例えば、デジタル化もその一つだ。池内教授は「デジタル化がどんどん進み、私の周囲でも『買い物が面倒くさくなった、怖くなった』という意見を聞きます」と話す。

   また、特に独居男性については、人と接する機会の減少によるコミュニケーション力の衰えも理由の一つだと指摘する。

   池内教授は、「こうした人たちの不満が低減するような世の中を作っていく」ための対応を考えることも大切だと話す。

「誰しもが最後まで幸せに暮らせるような、そんな社会を国民一人ひとりが協力して築き上げ、初めて真の意味でのカスハラ対策は完結するのだと思います」
1 2
姉妹サイト