バド選手が試合で倒れて「AEDの使用もないまま」死亡 日本AED財団「痛恨の極み」、緊急メッセージに込めた思い

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   バドミントン中国代表の男子選手(17)が試合中に突然倒れ、搬送先の病院で亡くなった。心臓マッサージもAED(自動体外式除細動器)使用もなかったとして、AEDの普及などに取り組んでいる「日本AED財団」(東京都千代田区)が遺憾の意をサイトで表明した。

   当時の状況は映像にも残っており、様々な報道が出ているが、AEDを使わなかった理由については、はっきりしていない。財団では、J-CASTニュースの取材に対して、AEDを使える準備をしていくことが大切だと改めて訴えている。

  • AED(写真はイメージ)
    AED(写真はイメージ)
  • 公式Xでも投稿
    公式Xでも投稿
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バッグから何かを出したり、靴を脱がせたりしたが...

   このアクシデントは、インドネシアで2024年6月30日に行われたアジアジュニア選手権団体戦の日本対中国の男子シングルス第1ゲームで起きた。

   現地のテレビなどで流れた映像を見ると、中国ジュニア男子代表の張志傑(Zhang Zhijie)選手は、右手のラケットでバドミントンのシャトルを飛ばして日本選手に渡し、日本選手がそのシャトルでサーブをしようとしたときだ。

   張選手は突然、前のめりに倒れ、うつぶせの状態になった。立とうともがくが、起き上がれず、呼吸が荒くなった様子だ。手前から、中国側のスタッフが近づき、声をかけるが、張選手は頭を動かすしかできない。スタッフは、手前に戻って、「ヘイ!」と声を上げ、何かジェスチャーをする。日本選手は、センターに寄って、何か審判にアピールした。

   その後、医療スタッフらしき2人が張選手に駆け寄り、1人が張選手を起こして仰向けにさせた。3人目が加わり、バッグから何かを出したり、靴を脱がせたりした。続いて、担架が運ばれ、さらに2人が加わって、張選手を乗せ、コートから運び出した。この間、2分余の出来事だった。

   報道によると、張選手は、救急車で病院に運ばれたが、心不全で亡くなったという。張選手が倒れてからの対応が問題視され、主審が緊急時の対応をためらったと指摘も出たが、真相ははっきりしていない。世界バドミントン連盟は7月2日、主催したアジアバドミントン連盟とインドネシアバドミントン協会と協議しながら、徹底的な調査を行うことを明らかにした。

「電気ショックが1分遅れるごとに救命率は7~10%ずつ低下」

   こうした事態を受け、日本AED財団は7月2日、「『スポーツ現場の突然死』について」と題した緊急メッセージを公式サイトで出した。

   そこでは、「試合中に悲しい出来事 がありました」などと切り出し、次のように指摘した。

「選手は倒れたあと、その場での胸骨圧迫(心臓マッサージ)もAEDの使用もないまま担架で運ばれ、残念ながら病院で死亡が確認されました。17歳という若い、有能な選手がスポーツ現場で突然死をとげたことは痛恨の極みであり、深い哀悼の意を捧げます」

   続いて、「スポーツ中の突然の心停止は決してまれではありません」として、「しっかりと準備をして、素早くAEDを用いた救命処置を行うことが出来ればスポーツ中の心臓突然死はゼロを目指すことが出来ます」と指摘した。そして、「人が目の前で倒れたら医者の到着を待つのではなく、一秒でも早く、現場に居合わせたコーチ、選手、審判、観客の誰もがとっさに手を貸すことが求められます。すぐに手分けしてAEDを取り寄 せ、119 番に通報することが重要です」と訴えている。

   緊急メッセージでAEDが使われなかったとしたことについて、日本AED財団は3日、「ウェブ上で公開されているXの動画から確認しました」とJ-CASTニュースの取材に答えた。詳細な状況やAEDの設置状況などは分からないとしたうえで、財団として「緊急メッセージを発信した思い」を次のように明かした。

「現時点で現地の詳細な状況まではわかりかねますが、日本AED財団としては、救命は1分1秒を争う処置であることを国民のみなさまに広くご理解いただきたく、公開されている情報から知り得た範囲で、緊急メッセージを送らせていただきました。現時点で当財団が確認できるのは、試合の動画の中で、選手が倒れたあとスタッフが駆けつけているものの、胸骨圧迫の実施もAEDの使用も認められないまま、担架で運ばれるまでの様子のみです。画像を分析すると、倒れて担架で運ばれていくまでが時間にすると2分8秒になりますが、少なくともその間、必要な救命処置が取られなかったことは事実です。AEDなどによる電気ショックが1分遅れるごとに救命率は7~10%ずつ低下いたします。この2分8秒が無処置であれば、それは救命にとって看過できないことであることを、国民のみなさまに広く知っていただきたい。不幸な出来事でしたが、同じようなことが日本の様々なスポーツ場面で起こらないとも限らないことから、少しでも多くのみなさまに『自分事』として捉えていただきたいとの思いから、緊急メッセージをお送りした次第です」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

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