修正された厚労省カスハラ資料、「社会的地位の高い人、高かった人」はクレーマーになりやすい? 専門家に見立てを聞いた

多くの対価を払った=「少しくらいは特別扱いをしてもらっても...」という考えにつながりやすい

   では、実際はどうなのか。関西大学社会学部の池内裕美教授によると、カナダの論文では、高学歴、高収入、そして管理職や専門職に就いている中年世代が他の属性に比べて苦情をいう傾向にあることが実証されているという。さらに、「あくまで自身が行ったインタビューやリサーチによる見解」だと断った上で、カスハラをする人の中には、長年顧客としてその店舗やサービスを利用したり、多くのお金を使ってきたりした、いわゆる「VIP」顧客もおり、それが企業を困惑させる一つの問題になっていると指摘した。

   例えば、グリーン車の客から執拗なクレームを受けたり、行政であれば「高額納税者だから優遇しろ」などと言われたり、といったものだ。

   池内教授は、こうした「VIP顧客」がカスハラをする理由として、「多くの対価を払ったのだから、少しくらいは特別扱いをしてもらってもよいだろうという考えにつながりやすいというのはある」と説明する。事実、「商品やサービスに支払った対価と苦情生起の関係性は既存研究でも指摘されている」とのことだ。

「VIPになるだけの高収入を得るには、資産を受け継いだり、起業で成功したりといった一部の人以外は、カナダの研究例にあるように管理職に就くなど、社会的地位が高くないとなかなか難しいのではないかと思います」

とも話した。

   また、「VIP顧客は、"自分はVIPだ"という誇りやプライドが高く、それが傷つけられた時に激しく怒り、プライドを回復するために苦情を訴えるのではないか」とも考察している。このことは、実際に池内教授自身の調査でも示唆されており、「自尊感情の高い人が、自我が脅威を受ける状況に直面した場合、攻撃性が高くなる」ことを見出している。

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