神奈川県川崎市などが主催したイベントで、航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」の展示飛行が、TBSの報道ヘリ接近が原因でコースなどの変更を迫られたのではないかと、X上で不満の声が上がっている。
TBSは、ウェブサイト配信のニュースなどで、ブルーインパルスを上空から撮影した映像を流していた。TBSの広報・IR部は、「当社のヘリは、ルールに従って制限エリア外で取材しておりました」と説明している。
「予定外の航空機の影響で中止となった」と会場でアナウンス
川崎市市制100周年記念事業の一環として、「かわさき飛躍祭」が2024年6月29日土曜日に同市中原区内の等々力緑地で行われ、ブルーインパルスはその中で、緑地の上空などを約20分間飛行した。
報道によると、ブルーインパルスの6機が編隊飛行を組み、白煙で空にラインを引きながら飛んだ。2機で大きなハートマークを空に描くなどすると、多摩川の河川敷などに集まった見物客らから大きな歓声と拍手が上がった。
この展示飛行について、ブルーインパルスの演目が説明された後、「予定外の航空機の影響で中止となりました」として飛行がそのまま終了したとの情報がX上で出回った。そして、TBSヘリが6機の後方に見えたなどとして、写真もいくつか投稿された。そして、飛んだコースとブルーインパルスのコースを比較し、ヘリがブルーインパルスに接近したため、演目やルートが変更されたのではないかとの推測が相次いだ。
TBSに対しては、「皆が楽しみにしてたブルーインパルスの邪魔した」「事故あったらどうするつもりだよ!」「どの面下げてブルーインパルスのニュース流してるのか」といった批判も寄せられた。
記念事業を担当する川崎市のシティプロモーション推進室は7月2日、J-CASTニュースの取材に対し、当時の状況を説明した。
それによると、当日は、14時20分ごろから展示飛行が始まり、開始から10分ぐらい過ぎて、最後の6演目目に入るときに、ブルーインパルスの飛行が突然中断された。
「目視でヘリが近いと思い、安全のため展示飛行を一時中止した」
「航空自衛隊から、パイロットが飛行中にヘリが飛んでいることを目視で確認し、ヘリの位置、高さが正確に把握できないため、安全面に配慮して、いったん飛行を止めたと説明を受けました。その後、ヘリの位置が確認できたとして、ブルーインパルスの飛行を再開しています」
飛行再開は、中断してから5分ほど後だという。ただ、当初は、1機の後ろに5機が平行に飛ぶ「リーダーズベネフィット」という6演目目の予定だったが、三角形の隊形で飛ぶ1回目の「デルタ・ダーティー」を再演したとした。なぜ演目の内容が変わったのかについては、分からないという。
当日は、目視でブルーインパルスの上の方をヘリが飛んでいるのが遠くに見えたが、どこのヘリかは分からないという。会場では、「予定外の航空機の影響で中止」といった内容のアナウンスが流れたとした。
飛行中断について、川崎市では、「残念な部分はありますが、安全に飛行していただくのが第1だと思っています」と述べた。ヘリ側への抗議などはする予定はないという。
航空自衛隊の航空幕僚監部の広報班は7月2日、取材に対し、川崎市に伝えた内容を認めたうえで、次のように話した。
「パイロットが目視でヘリがちょっと近いと思い、安全確認のため展示飛行を一時止めました。飛行の空域の外なのか内なのか、判別できなかったからです。地上の指揮所に無線連絡し、管制官とも連携を取って確認したところ、ヘリが空域外にいると判別できたため、飛行を再開しました」
どこのヘリなのかは、分からないという。空域を設定したものの、強制力はないため、ヘリ側に抗議などをする立場にないとしている。
ブルーインパルスの飛行に影響したかについて、TBSの広報・IR部は1日、取材に対し、「当社のヘリは、ルールに従って制限エリア外で取材しておりました」と答えた。そして、「防衛省、川崎市から当社に抗議があったという事実はありません」と付け加えた。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)