「単なるデジタル化」にはとどまらないDX
経産省が2020年2月に発表した「DXレポート2」によると、デジタル化には3つの種類がある。1つ目が「アナログ・物理データの単純なデジタル化」としての「デジタイゼーション」、2つ目が「個別の業務・製造プロセスのデジタル化」としての「デジタライゼーション」だ。
経産省が推進したいのは、3つ目の「DX(デジタルトランスフォーメーション)」だ。個別業務にとどまらない「組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化」を目指すところが、デジタライゼーションと違うところ。
また、「『顧客起点の価値創出』のための事業やビジネスモデルの変革」もDXの狙いのひとつで、単に内向きの業務改善ではなく、デジタルによって新規事業やサービスを生み出し、売上向上を目指す取り組みとなっている。
もちろん、デジタイゼーションやデジタライゼーションも、DXを進めるうえで必要なステップ。しかしAさんによれば「たぶん多くの企業では、デジタイゼーションの先に進むことは難しい」という。
「その理由は、トップがDXに真摯にコミットメントしないからです。組織上は社長をトップに置いたDXの会議体が置かれていたとしても、実際に推進するのは『DX推進室』などのスタッフ職任せ。これでは『改革』はできません」
Aさんは「極端な例」として「工場の自動化、無人化」を挙げる。本来であればトップが宣言し、その息のかかった取締役や執行役員が生産部門のトップとなってDXの取り組みを先導し、その推進をDX担当スタッフが支える形になるべきだ。
しかしAさんの会社では、社長は「DXをやるぞ」と宣言したものの、あとはスタッフに仕事をやらせ、会議でも報告待ちに徹している。仕方がないので、Aさんは生産現場に赴いて「DXを推進しますので、現状の業務プロセスややり方を調査させてください」と頼みに行くが、担当者は非協力的だ。