給食のビワを食べた児童・生徒126人にアレルギー反応が出て3人が救急搬送されたと、山梨県の富士吉田市が発表したと報じられた。影響を受けた人の数の多さに、ネット上では、「ビワでこんなにアレルギー反応出るの?」などと驚く声が相次いでいる。
専門家からは、花粉症との関係について、X上で指摘が出ている。実際はどうなのか、市学校給食センターに話を聞いた。
花粉症なら、果物を食べると「口腔アレルギー症候群」になる場合も
報道によると、富士吉田市立小中学校の11校で2024年6月25日、約3500人分の給食に国内産のビワを出し、児童・生徒らは給食を食べた後、ノドや目のかゆみや目の赤い腫れなどの症状を訴えた。腹痛やじんましんが出た子どももいたという。
救急搬送された3人のうち1人が入院したが、26日現在は退院している。
この事態が報じられると、X上では、「びわアレルギーって初めて聞いた」「思ったより人数が多く驚きました」「食物アレルギーは本当に怖いですね」といった声が次々に出た。
なぜ126人全員がビワによるアレルギー反応と分かったのだろうか。
この点について、市学校給食センターの所長は26日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように答えた。
「同じ給食のメニューを市立保育園にも提供しており、園児が皮をむくのが難しいことを考え、ビワは提供しませんでした。園児からは症状の報告は出ていませんので、原因食材はほぼビワで確定しました。症状が出た小中学校の児童・生徒は、口の中のイガイガ感やかゆみを訴えており、果物に出やすいアレルギー反応の特徴が見られました」
厚労省のアレルギーポータルサイトによると、花粉症の人の中には、果物や生野菜を食べた後、数分以内に唇、舌、口の中や喉にかゆみやしびれ、むくみなどがあらわれる「口腔アレルギー症候群」を発症することがある。花粉にあるアレルギーの原因となる物質のアレルゲンと、果物や野菜に含まれるアレルゲンが似ているために起こる、花粉症との交差反応だ。
アナフィラキシーショックの症状は見られず
厚労省によると、この交差反応が証明されている中には、ビワが属しているバラ科の果物が含まれている。バラ科との反応は、5、6月ごろに飛散がピークを迎える白樺やハンノキなどカバノキ科の花粉が挙げられていた。
交差反応で起きる口腔アレルギー症候群では、まれにではあるものの、全身に症状が出現するアナフィラキシー反応が生じる場合があるという。
アレルギー反応を示した児童・生徒らについて、市学校給食センターの所長は、学校を通じて調査中ではあるものの、「口腔アレルギー症候群を発症した可能性は、限りなく高いと考えています」と明かした。ただ、アナフィラキシーショックの症状は見られなかったとした。
過去の報道を見ると、東京都大田区立小学校で19年6月、児童11人が体のかゆみなどを訴えて救急搬送され、給食に出たビワが原因でアレルギー症状が起きたとみられるケースがあった。
一方、市学校給食センターでは、ビワはアレルギーのガイドラインに品目がなく、最近、近隣の市町村でビワを給食に出す小中学校が多数あることから、市でも、給食に出したと説明した。
なお、今回は、ビワによるアレルギー反応が多数出ていることから、X上では、別の原因もあるのではないかとみる専門家もいる。農水省のサイト「ビワの種子の粉末は食べないようにしましょう」では、ビワなどの未熟な果実や種子には、アミグダリンなどの有害なシアン化合物が含まれていて、食べると頭痛やめまいなどの症状を起こす場合があるとされている。
この点について、市学校給食センターでは、「腐っていたり、色が悪かったりするものは弾いており、未熟ではなく食べごろのビワを出しています。別に原因があるかについては、今後調べてみないと分かりません」と話した。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)