DAO(自律分散型組織づくり)がめざすもの
前川 DAOの取り組みの中で、現時点で、手応えを感じている事例がありますか。
上田さん シェアハウスをDAO化した例があります。住んでいるお客さん自身が株主で、ハウスルールもサービス提供者が決めるのではなく、いわゆる株主総会で決めるのです。必要な設備についても、100万円を渡すので、自分たちで相談して好きなものを買ってもらいます。
サービス提供者にとっては、設備について適切なものを選ぶのも買い付けるのも手間ですし、買ってきたものが不評で入居者から苦情を言われても困ります。皆で投票して意思決定できる仕組みで対応してもらえれば、助かります。
新規入居者の決定や受け入れ対応も、入居者がやってくれます。この仕事には報酬のトークン(デジタルマネー)がもらえるのですが、新規入居者が入れば、その分自分たちのトークンも増える仕組みです。
ハウスの人口密度が増えるのはマイナスもあるけれど、人数が増えれば自分たちにも利益があるという、オーナー感覚なわけです。
それまで、管理会社がシェアハウスを月に何回か見に行っていたのに、今は年に数回です。というのは、ハウスでの情報交換や意思決定がすべてネット上のやりとりで閲覧でき完結しますから、他の物件以上に現場に行かなくても手に取るように様子がわかるのです。
▼ガイアックスの取り組み事例:「日本初の DAO 型シェアハウス『Roopt DAO』、 開業から 1 年で売上 1.7 倍&利益率の大幅改善を達成~DAO で稼働率 UP&運営・集客コスト減を実現~」(2023年10月11日)
前川 いままで、わざわざ管理会社をつくって一生懸命に物件管理をしていたのが、自律分散型組織にすることで、不要になったということですね。
上田さん このように、ICTが進化しているので、日本の行政の仕組みにも同じことが応用できるはずなのです。これまでは地方や国の代議士を選んで、行政を動かしていました。
でも、イシューごとの国民投票がテレビの赤青緑のボタンでもサクッとできてしまう。我々の会社組織も株主総会で取締役を選んで、取締役が毎週会議をして物事を決めています。
でも、今時の株主総会など、ICTを駆使すれば一瞬で行えますし、何週間も前に招集通知を出す必要もない。定款変更の定足数を10%などに設定しておけば、サクサク更新も進みます。
前川 その考え方と仕組みを実際に広げていくことができれば、会社も社会もガラリと変わりますね。