取締役会も管理職も自律分散型組織で不要に ガイアックスがめざす「視野の広い人」が育つ環境づくり【インタビュー】

定款、規程、マニュアルだけで動く理想の会社とは

前川 残念ながら、日本企業で働く人たちは、世界と比してエンゲージメントがとても低く、最下位ラインの現状です。これまでのお話とも重なる部分が多いとは思いますが、これからの働きがいのある会社とはどのようなものだとお考えですか。

上田さん 事業構造の透明化が重要だと思っています。
お客さんからの期待や喜びをダイレクトに体感できることが大切なのですが、それが組織の中をきちんと流れて通っているのかということです。最前線の営業だけは感じていても、その一歩後ろのメンバーに通じていないというのはありがちです。それを、構造上分かるようにしておくべきなのです。

前川 全従業員が内向きにならず、顧客や社会に向くためにも、とても大事なことですね。
私が営む会社でも、売上という言葉は使わず「お役立ち」という言葉を使っています。最前線の営業のみならず、全従業員が世のため人のために自分はお役に立っているのかを感じながら働いてほしいからです。御社では、どのように進めているのですか。

上田さん 実は、私たちが進めているDAO(自律分散型組織づくり)は、そこをとてもよく分かる仕組みにしています。
ブロックチェーン上だけに存在するDAOでなく、ごく普通に世の中に存在する組織づくりを目指しています。それはすなわち、「定款と規程とマニュアルで動く組織」です。

前川 それだけを聞くと、ごく普通のことに思えますが。定款、社内規程、業務マニュアルのない会社はありませんよね。

上田さん 私が理想とするのは、本当にその3つだけで動く組織です。
そうなれば、上司は果たして必要かと問いたいのです。いまの取締役会は、定款類には書かれていない例外事項を話し合い意思決定します。管理職である上司も、それらに書かれていないことをマネジメントしているわけです。
であるならば、株主総会の決議項目に定款、規程、マニュアルを上げてしまい、詳細な内容まで随時更新されていけば、取締役会も管理職も不要です。当面、会社法上の代表取締役は必要ですが、それも定款類の操り人形です。上司からの指示命令も必要なくなります。
働くメンバーは定款類に書いてある組織のパーパスや運営ルールと、お客様のニーズを満たす仕事と直接向き合えばよいのです。
出資者に対しては、その定款類の内容がエレガントだと感じたら出資してくださいと頼みます。定款類に必要な改善点があって、株主総会の議案に上がればどんどん更新する。定款類はすべてオープンなので他社も真似できますが、弊社は更新の速さで勝負しますと説明するのです。
そうした構造をすべてオープンにすれば、その組織が自身のパーパスやミッションにどれだけ向き合って動いているのかも、すべて可視化されるわけです。そういう会社を、世の中に量産していきたいと考えています。

▼ガイアックスの取り組み事例:「日本初、『株式会社型 DAO』による歴史的建造物への小口投資プロジェクト」(2024年6月3日)

前川 倒し切っていますね(笑)。その組織像は、今、優秀な若手の早期離職が激増している伝統的な組織の改革に向けた一つの答えでもありますね。
今の若者たちは、SDGsやESGなどもよく学び、各企業の経営理念やビジョンに共感して会社を選ぶ傾向も強くなっています。
経営トップの言葉や人事の説明に期待して入社してみると、言っていることと現場でやっていることが全く違うと感じてしまう。日々の仕事やマネジメントに幻滅して、辞めてしまうケースが多いのです。
だから、真っ当な定款や、規程、マニュアルがあれば、徹頭徹尾その通りに組織運営せよということですよね。しかし、そうなると、そこでの経営リーダーやマネジャーの役割とは一体どうなるのでしょうか。

上田さん 現在の私たちは、そうしたビジネスを生み出す会社の経営者として、当面役割を果たしていますが、仕上がった各ビジネスにおいては、経営陣の相対的存在意義は減っていくでしょう。
私自身、経営者は組織の大小にかかわらず3人から5人で十分だと感じています。私たちのDAOへの取り組みは始めてまだ日が浅いので、今後いろいろな事例を作っていきたいと考えています。

前川 つまり、取締役や管理職は、しっかりとした定款、規程、マニュアルの仕組み作り上げるために必要な役割であって、それらが完成すれば不要になり、自律分散型で組織は回るだろうということですね。いゃあ、本当に倒し切った発想ですね。

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