宮藤官九郎さんが監督する2024年7月放送開始の新ドラマ「新宿野戦病院」(フジテレビ系)に登場する、キャラクター「堀井しのぶ」の紹介文の用語の使い方が誤っているとXで指摘が相次いだ。「ジェンダーアイデンティティ」という用語で、性的マイノリティーに関する情報を発信するライターもJ-CASTニュースの取材に対し、キャラクター説明での用語の使い方は「日本語として誤り」だと指摘している。
ウェブサイトを2024年6月19日15時半頃に確認すると、この表記は削除されていた。フジテレビはJ-CASTニュースの取材に対し、「文章表現に誤りがあった」と説明した。
「単純に日本語を間違えてますよ」「理解度の低さがわかってしまうよ」
番組ウェブサイトには、お笑いタレントで俳優の塚地武雅さん演じる「堀井しのぶ」の人物紹介で「院内の看護師長。ジェンダーアイデンティティで、その振る舞いや言動にチャーミングさを兼ね備えており、病院に運び込まれてくるDV被害者、トー横キッズなど"ワケあり"患者たちに対しても、物怖じすることのないフランクな性格」と記載されていた。
Xでは「ジェンダーアイデンティティ」の使い方に関して、次のような指摘の声があがっている。
「ホームページに『ジェンダーアイデンティティで...』って書かれてて混乱してる。単純に日本語を間違えてますよ」
「『ジェンダーアイデンティティで...』なんて書いてしまう時点で理解度の低さがわかってしまうよ...」
「シンプルに意味間違ってるのマジで勘弁して欲しい...」
性的マイノリティーに関する情報を発信するライターで、一般社団法人fair代表理事を務める松岡宗嗣さんも19日、「ジェンダーアイデンティティ」の表記についてXで「言葉の使い方が端的に誤り」と投稿した。
J-CASTニュースが松岡さんに「ジェンダーアイデンティティ」の本来の意味と使い方を尋ねると19日、次のように説明した。
「ジェンダーアイデンティティとは、日本語で『性自認(または性同一性)』を指し、『自分の性別についてどう認識しているか』という意味を表します。例えば『私のジェンダーアイデンティティは男性です』とか、『ジェンダーアイデンティティは女性か男性かという二元論に当てはまりません』といった表現で用いられます」
「キャラクターの紹介の仕方を見る限り、丁寧に描こうとしているとは思えない」
今回の「ジェンダーアイデンティティ」の使い方は、なぜ誤っているといえるのか。
「ジェンダーアイデンティティ(性自認)は、例えば『人種』『年齢』などのように属性を表す言葉なので、キャラクター説明の『院内の看護師長、ジェンダーアイデンティティで、』という表現は、日本語として誤りです。例えばこれを『院内の看護師長、人種で、』または『院内の看護師長、年齢で、』と置き換えると、いかに誤りであるかがわかると思います。
今回の場合、例えば『院内の看護師長、ジェンダーアイデンティティは女性でも男性でもない』または『ジェンダーアイデンティティは男女二元論に当てはまらず』とか、もしキャラクターのアイデンティが定まっているのであれば『院内の看護師長、ノンバイナリー(またはXジェンダー)で』としても良いかと思います」
今回のようなことが起きたことについて、次のように懸念を示した。
「端的に知識不足だと言わざるを得ないと思います。今回の『ジェンダーアイデンティティ』という言葉の誤った使い方を見ても、少し調べたらわかるはずが、それを怠ってしまう点に、製作陣が誠実に向き合い表現しようとしているか疑問を抱きますし、今後ドラマの中でどう描かれるのか不安を感じます。
『ジェンダーアイデンティティが女性でも男性でもない』というキャラクターが描かれること自体は問題ありませんし、むしろ描き方によっては社会に対して気づきを与えたり、ステレオタイプを覆したりなど歓迎すべきものだと思います。しかし、キャラクターの紹介の仕方を見る限り、丁寧に描こうとしているとは思えない状況だと感じます」
ウェブサイトの「ジェンダーアイデンティティ」の表記は2024年6月19日15時半頃確認すると、削除されており「院内の看護師長。その振る舞いや言動にチャーミングさを兼ね備えており、病院に運び込まれてくるDV被害者、トー横キッズなど"ワケあり"患者たちに対しても、物怖じすることのないフランクな性格」と変わっていた。J-CASTニュースがフジテレビ広報宣伝部担当者に「ジェンダーアイデンティティ」の表記を消した理由や、元々の表現を考えたか、波紋が広がっていることをどう受け止めるかについて取材を申し込んだところ、20日、次のように回答した。
「文章表現に誤りがあったため、修正したものです」
(J-CASTニュース編集部 井上果奈)