新卒や生え抜き人材では「変革の牽引は困難」
今後もキャリア採用は増えていくのか。Aさんは「当然そうなる」という。
「まず20代の若手の場合、多額の予算が積まれている割に人手不足が著しいDX領域に、比較的高い給与で募集されることが多いです。とはいえ、決められたことをする『兵隊』としての需要という点は、従来と大きく変わるものではありません」
変化が起きているのは、30代後半から40代の脂の乗った世代で、実際に企業の「変革」に携わった経験のある人材だという。この層は採用人数としては相対的に少ないものの、需要が非常に高くなっている。
「各企業は中期経営計画に『事業ポートフォリオの変革』、すなわち中期的に企業が生き残るために戦略を大きく転換し、事業の組み合わせを変えようとしています。そのためには、既存事業における『生産性の飛躍的向上』に加え、『新規事業の創出』を推進しなければなりません。しかし変革を牽引することは、社内の既存人材では困難と考える企業が多いのです」
新たな変革を行う場合、新たな視点や専門性が必要になるが、既存の人材は発想が固まっていて柔軟な提案を行うことが難しく、リスキリングにも限界がある。人間関係のしがらみで、他部署に厳しい指摘を行えない場合もある。
「日本の政策も外圧に弱いといわれますが、企業の戦略転換にも『他社の血』が必要になるんです。これまでは波風立てずに従来のやり方をうまくこなしてきた人が評価されてきたのですから、生え抜き人材では変革は難しい。新卒を採用しても既存路線を脱却できない。変革推進人材をキャリア採用で確保する流れは、しばらく続くでしょうね」