先住民差別ではないかと批判された男性3人組バンド「Mrs. GREEN APPLE」の新曲MVについて、民放キー局の朝のワイドショーが無批判で取り上げていたとして、ネット上で注目を集めている。
所属レコード会社などが謝罪して、各局はどのように取り上げ直したのだろうか。フジテレビ、テレビ朝日、TBS、日本テレビの在京キー局4局について検証した。
類人猿に人力車を引かせるシーンなどを繰り返し流す
大航海時代のコロンブスなどに扮したバンドのメンバーらが、類人猿にピアノを教えたり、人力車を引かせたり...。新曲「コロンブス」のMVが2024年6月12日夜にユーチューブの公式チャンネルで公開されると、その翌日未明からすでに、X上では問題を指摘する投稿が出た。この投稿は、朝までに拡散され、批判の声が噴出していた。
そんな中で、民放キー局はそれぞれ、13日朝のワイドショーの中で、このMVをエンタメの話題として取り上げた。どの局もネット上で批判が出ていることに触れず、類人猿に人力車を引かせるシーンなどを繰り返し流した。
この日の正午ごろから、メディアが問題を取り上げ始め、レコード会社「ユニバーサルミュージック合同会社」などが昼過ぎには公式サイトのニュースリリースで、「歴史や文化的な背景への理解に欠ける表現が含まれていた」と謝罪して、MVの公開を停止する事態になった。ボーカルの大森元貴さん(27)も同日夕、制作までの経緯を公式サイトで説明して謝罪した。
この騒ぎは、14日も続いており、TBS系音楽番組「CDTVライブ!ライブ!」へのバンドの17日出演見合わせが発表された。
大きな騒動になったことを踏まえると、世論の関心事に敏感なワイドショーは、14日朝に特集を組むという考え方もできた。実際は、どのように放送されたのだろうか。
フジテレビ系番組「めざましテレビ」は、13日の放送では、類人猿が人力車を引くシーンを流しながら、秘蔵のメイキング映像も紹介した。
「THE TIME,」は、「昨日の放送でMVを紹介」と説明
そして、騒動が続く6月14日の放送は、新曲MVが公開停止になったことを伝え、大森さんの謝罪コメントも紹介した。ただ、前日の放送について釈明はなく、1分間ほどでこのニュースが終わった。
テレ朝系番組「グッド!モーニング」は、13日の放送で人力車やピアノのシーンを流したが、14日の放送では、レコード会社などの謝罪を伝えたほか、街の声も紹介した。「過去の歴史を無視するような作品というのは、あまり認められるべきではない」とする批判のほか、「作品として見るくらいなら、別にそれはまた1つの形」とする意見も取り上げた。放送で3分間を割いていたが、この番組も、前日の放送への釈明はなかった。
TBS系番組「THE TIME,」は、13日の放送で人力車のシーンを流し、14日には、植民地主義を想起させると批判が出たことやレコード会社などの謝罪を伝えた。最後に、「昨日の放送で、このミュージックビデオを紹介していました」と説明したが、そのことに対する釈明はなかった。
新曲MVの紹介に最も時間を割いたのは、日テレ系番組「ZIP!」だ。
13日の放送で、「歴史上の偉人熱演」として、人力車のシーンを繰り返し流したほか、ピアノのシーン、類人猿に馬の乗り方を指導したり、「コロンブスの卵」を再現したりする映像も流れた。これらの紹介に、2分間をかけていた。
ところが、14日の放送では、今回の騒動をまったくスルーして番組が終わってしまった。
14日朝は、コメンテーターが激論を交わすテレ朝系「モーニングショー」やネットの情報に敏感なフジテレビ系「めざまし8」も騒動を取り上げず、この話題のニュースは、低調のうちに終わった。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)