日本航空(JAL)で安全をめぐるトラブルが相次ぎ、国交省が2024年5月、行政指導にあたる厳重注意を行った。注意の対象になったトラブルは5件。そのうちの1件が、パイロットが滞在先の米国で飲酒トラブルを起こし、その影響で折り返し便が欠航になった事案だ。
JALが6月11日に国交省に提出した再発防止策では、運航乗務員(パイロット)や客室乗務員(CA)に対して、滞在先での「禁酒令」が出ていたことが明らかになった。同様の禁酒令は18年11月以来5年半ぶりで、この時は解除まで5か月かかっている。
滞在先のホテルで酔って騒ぎ、警察に通報される
問題になった事案は、羽田発ダラス・フォートワース空港行きの便を運航したJAL機長が4月22日夕方から翌23日未明(現地時間)にかけて滞在先のホテルで酔って騒ぎ、警察に通報された影響で折り返し便が欠航になった、というもの。宴会は深夜2時まで続いたが、乗務予定の便までは丸1日以上間隔があり、JALのアルコールに関する規定に抵触したわけではなかった。ただ、JALとしては「心身の状態を確認する必要がある」として乗務から外すことを決めた。
これ以外に厳重注意の対象になった事案は、福岡、米シアトル、サンディエゴで起きた滑走路誤進入や停止線越え計3件、羽田空港で隣り合っていたJAL機同士の翼が接触した事案。 報告書では、これらの事案に共通する要因を2つ挙げている。ひとつは「現場が安全を大前提とし立ち止まれる環境がつくれていない」点。これは「重要なタイミング(滑走路停止線の通過、航空機のプッシュバック開始等)で十分な注意が向けられていない」事実が認められたことによる。
もうひとつが「リスクマネジメントが十分に機能していない」点で、「過去および至近で類似事例が発生していた」ことが、その理由だとされた。
報告書では事案ごとの対応策も列挙。「緊急対応」「短期対応」「中長期対応」の3つの段階があり、飲酒事案では「緊急対応」のひとつとして
「運航乗務員、客室乗務員の当面の滞在先での禁酒」
がある。禁酒令が出たのは4月26日。事案の発生が発表された日だ。立花宗和常務は記者会見で、
「(アルコールの)検知事例ではない、という前提はあるものの、社会にご迷惑をおかけした要因そのものがアルコールに起因している」
などと説明した。