上方落語を代表する落語家であり、関西のテレビ番組でも人気を博した桂ざこばさんが肺炎のため2024年6月12日に死去した。76歳だった。所属事務所の米朝事務所が同日、公式サイトで発表した。
「我々スタッフにもお気遣いくださる、とても素敵な師匠でした」
米朝事務所は12日、「弊社所属 桂 ざこば(本名・関口 弘)が、喘息のため、6月12日(水)午前3時14分、自宅にて息を引き取りました」と報告した。
ざこばさんの人柄について「我々スタッフにもお気遣いくださる、とても素敵な師匠でした」としている。
通夜・葬儀は、故人及びご家族のご意向により家族葬とし、追ってお別れの会を開く予定だという。
ざこばさんは落語家として知られるだけでなく、「探偵! ナイトスクープ」や「そこまで言って委員会NP」など、人気テレビ番組にも多数出演。関西の顔として愛された。
「誰よりも人間味に溢れ、正直で、金無垢のように純粋で......」
型破りなキャラクターと人情味あふれる性格で知られたざこばさんの訃報に、落語家や著名人らから哀しみの声が相次いでいる。
ざこばさんと同じ米朝一門の桂米紫さんは「ざこば師匠のこと」と題したブログを更新し、「あまりにも急なことで、我ら門弟もただただ今は、驚きと悲しみでいっぱいです」とした。
ざこばさんについて「世間的には、豪胆・豪快・豪放磊落といったイメージが強かったとは思いますが、実はとっても繊細で、ナイーブで、それなのに体裁の鎧で身を固めたりすることなく、いつも剥き出しで......。誰よりも人間味に溢れ、正直で、金無垢のように純粋で、とびっきり面白く、可愛い方でした」とした。
米紫さんは「初めてのざこば師匠の孫弟子として、随分気にかけて可愛がって戴きました」という。
ざこばさんは「魂の人」だったとして、「あの熱く生々しく、かつ哀愁に満ちた魂の、たとえ百分の一でも受け継ぐことが出来れば......と、切にそう思うのです」と決意をつづった。
ざこばさんに向け「金無垢のように純粋で正直で、そして剥き出しであるが故に、我々には分からない悲しみや苦しみも、たくさん感じ取られてきたのではないかと思います。師匠、どうぞごゆっくりなさってください」と呼びかけている。
落語家の笑福亭銀瓶さんは「桂ざこば師匠からは『崇徳院』『天災』『強情』『鉄砲勇助』『不動坊』のお稽古をつけて頂いた。しかし、ネタのお稽古以上に『落語に気持ちを入れる』『自分の空気で喋る』ということを口酸っぱく言われたことを覚えている」と振り返り、「もっと会いたかった。喋りたかった」と寂しさを滲ませた。
続く投稿でも、「桂ざこば師匠との想い出、いろいろあります。とにかく熱くて、優しい師匠でした」としている。
「ユーモアだけでなく"新人"の私にも積極的に声をかけてくれた気配りの人」
共演歴のあるタレントらも、ざこばさんへの思い出を明かしている。
作家・ジャーナリストの門田隆将さんは、「私が読売テレビの『そこまで言って委員会』に出始めた頃から、ずっと重鎮席にいてくれた御意見番」と振り返った。
「ユーモアだけでなく"新人"の私にも積極的に声をかけてくれた気配りの人。毅然とした、惜しまれる日本人がまた一人いなくなってしまった...合掌」としている。
「そこまで言って委員会NP」で共演していた劇作家・脚本家の大野裕之さんは、ざこばさんとのエピソードを明かし故人を偲んだ。
「読売テレビ旧社屋のスタジオには、本番に入る前の廊下に椅子があった。隅っこで立っていると、桂ざこば師匠が『先生どうぞ』と椅子をすすめてくれました。僕のような一番下っ端にとても自然に『先生』と。ご自身以外の全ての人に敬意をはらってこられたんやろなと感じました。あのお人柄」
医師の森田豊さんは、ざこばさんとのツーショット写真やX上でのやり取りを添え「落語家・桂ざこばさん、謹んでお悔やみ申し上げます」とつづった。
「娘宅で焼き肉、帰宅して、一杯、あては、明太子、塩昆布等、ほなまた」としたざこばさんに、森田さんは「ざこば師匠。余計な御世話で失礼します。焼肉は長寿を導くけど、明太子と塩昆布の食べ過ぎは、体にあまり良くないからほどほどに!。わかっていてもやめられないのが人間ですが」とアドバイス。ざこばさんから「森田先生、ご注意ありがとうございます」との返信を受けていた。
元芸能リポーターの井上公造さんは「桂ざこばさん、たくさんたくさんお世話になりました。番組でも色々気遣い、ありがとうございました。大好きでした」とした。
お笑いコンビ「まるむし商店」の磯部公彦さんは、「ざこば師匠は一緒になるといつも私の事を褒めすぎやんと思うほど褒めてくださいました」として故人との思い出をつづった。 「小文枝師匠の落語会にお酒をお祝いに持って行くと『ええもんあるやん』と一番に開けてグビグビ飲んでおられました。仲良くさせていただきありがとうございました」としている。