大学生の就職活動で、最終選考の前にオンライン面接でふるいをかける企業が増えている。
広島大学大学院の研究グループは、オンライン面接では、受験者の視線がカメラ方向を向いていない場合、評価が大幅に低下することを明らかにした。
パソコン画面の面接官ではなく、パソコン上部のカメラに視線を合わせることが高評価を得る秘訣だと、研究者は語る。
画面に映る面接官と、お互いの視線がずれている
この研究報告「オンライン面接では、カメラを見て話したほうが高評価」(2024年6月3日付)を発表したのは、広島大学大学院人間社会科学研究科の山根典子教授(言語学・音声学)と、同研究科の進矢(しんや)正宏准教授(スポーツバイオメカニクス)の研究グループだ。
オンライン通話では、多くの場合、カメラはコンピュータスクリーンの上にあり、画面に映る会話の相手の顔とは位置がずれており、お互いが視線を合わせることができない。画面に映る相手に、自分を見ているようにするには、カメラを見る必要がある【図表1】。
そこで研究グループは、オンラインの就職面接で、受験者の視線方向が面接での評価にどのような影響を与えるかを検証した。大学生12人(男女各6人ずつ)に自己アピール映像を作成。
視線がカメラ方向(CAM条件=視線が相手と合う)と、画面方向(SKW条件=視線が下向き)の2つの条件で、60~90秒程度の模擬面接映像を録画した。また、その映像から音声のみを抜き出した動画(VO条件)も用意した。これら3つの映像および音声を、面接官役の社会人38人に視聴評価してもらった。
その結果、採用可能性スコアの点で、視線が合う映像や音声だけの動画に比べ、視線が下向きの映像の評価は低かった【図表2】。これは統計的に意味がある結果だという。
つまり、オンライン面接では、つねに視線が逸(そ)れている場合は、否定的に評価される可能性が高いのだ。
また、興味深いことに音声だけの動画も、視線が合う映像と同程度に評価がたかかった。さらに、評価される側と、評価する側の男女別の違いを分析すると、女性の受験者や面接官では、この視線の影響が男性より顕著に出る可能性が見られた【図表3】。
これはいったいどういうことだろうか。