SNSを利用する小中学生が急増している。
とりわけ、1日1時間以上もSNS漬けになる子どもが多くなっている実態が、NTTドコモの研究機関、モバイル社会研究所(東京都千代田)が2024年6月6日に発表した調査「【子ども】小中学生のSNS利用率上昇傾向続き、3人に2人が利用」」で明らかになった。
特に、女子中学生が心配だ。親はどう対応したらよいのか。調査担当者に聞いた。
女子中学生、すべてのSNSで利用度がずば抜けて高い
モバイル社会研究所の調査(2023年11月)は、関東1都6県の小中学生とその600人が対象だ。
まず、小中学生にSNSを利用しているかどうかを聞くと、小学生低学年も含め、LINE・Instagram・TikTok・Xのいずれかを利用している小中学生は上昇傾向にあり、63%となった。小学生低学年でも3割(36%)が使っており、特に中学生は96%と、ほとんどの子どもが利用している【図表1】。
次に、サービス別の利用率の推移をみると、【図表2】のように、LINE・TikTok・Instagramの利用率が急上昇していることがわかる。2023年の結果を各学年男女別にみたのが【図表3】だ。すべてのサービスで男子より女子のほうが利用率は高い。
近年、1日何時間もSNSに没頭する「SNS漬け」が問題になっているが、【図表4】は、各学年性別に1日1時間以上利用する割合を調べたグラフだ。女子中学生は、すべてのサービスで利用頻度がずば抜けた高い。特にTikTokとInstagramを利用する利用頻度が増えているのが特徴だ。
個人の特定、健康・学業の悪化、フェイクの心配...
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査をまとめたNTTドコモ モバイル社会研究所の水野一成さん(子ども・シニア・防災調査担当)に話を聞いた。
――SNSを中学生のほとんどが利用しています。小学高学年で6割近く、小学低学年でさえ3割以上が利用しているという調査結果ですが、なぜ、こんなに急速に小中学生にSNSが浸透したのでしょうか。
水野一成さん 2つの面で浸透したと思われます。1つはLINEに代表されるように、連絡をする手段として。もう1つは、かつてのテレビ番組の話題と同じように、生活の中での話題(楽しいコンテンツ)として見られている・共有しあっているためではないでしょうか。
――TikTokの利用の上昇ぶりが際立っています。なぜ、そんなに人気があるのでしょうか。特に、全学年を通じて男子より女子に、2倍近く人気があるのはなぜでしょうか。
水野一成さん スマホを持つ理由としても「友だちが持ち始めたから」は女子のほうが高いです。子どもからシニアまで、コミュニケーションに関する項目は女性のほうが高く出る傾向があります。
SNSはコミュニケーションツールですので、友だちの影響が大きい女子の利用が多いのではないでしょうか。テキスト中心のX、写真やビデオの共有中心のInstagramに対し、15秒~3分程度(多くが15秒)のショート動画中心のTikTokは、手軽に見られることが小中学生に人気がある要因かもしれません。
――一方、TikTokには「個人情報が特定されやすい」「情報の拡散力が高い」「炎上リスクが高い」といったリスクがあるとされていますね。米国では、バイデン大統領が今年4月に「TikTok禁止法」に署名したばかりです。
こうした点については、小中学生が使うことに心配はないのでしょうか。TikTokを1日に1時間以上利用する割合では、小学4年~6年の女子は、中学男子より多いありさまです。親としては心配になります。
水野一成さん たしかにいくつか心配な点があります。(1)個人が特定される、(2)長時間利用することによる健康や学業への影響、そして(3)フェイクニュースなどを拡散してしまうなどです。
ルール作りと、ペアレンタル・コントロールの実行を
――SNSを1日1時間以上利用する子どもが増えていますね。特に中学女子では、LINEとTikTokに1時間以上費やす人の割合が、それぞれ44%、39%と非常に多いことが心配です。男子に比べ、女子は色々と心配な面が多いと思いますが、親はどう対応すればいいでしょうか。
水野一成さん さきほども言ったように、同年代の普及が進めば、利用している友だちも増えます。その結果、メッセージのやりとり、コンテンツの共有が増え、利用時間も増えていきます。特に、女子はコミュニケーション関連が高く出る傾向がありますから。
親がとれる対策は、まずスマホを利用させる時にルールを決めること、そして話し合うことが大切ではないでしょうか。そして家庭によりますが、そのルールを守るうえでも「ペアレンタル・コントロール」を実行する。また、ルールは学年が上がるごとや、長期休み前などに見直すことをお勧めします。
――今後、小中学生のSNSはどう変化していくでしょうか。また、どんな課題があるでしょうか。
水野一成さん 親が管理するにも限界がありますし、そして、いつかは管理外になります。そういった面でも、家庭・学校・社会がSNSを含め情報リテラシーを高める取り組みが必要ではないでしょうか。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)