30代上司を「ふつうやりづらい」50代部下が徹底サポートしたのはなぜ 接待ノウハウ、強気の顧客交渉まで指南

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「先輩力」は、次世代に引き継がれていくもの

   また、Mさんは入社5年目でリーダーに抜擢された後も、部下の大先輩Tさんから大いに学びました。

   Mさんが自分のリーダーの肩書や立場にこだわらず、Tさんを仕事と人生の先輩としてリスペクトしていることがTさんにも伝わり、フランクで良好な関係になった様子がわかります。

   大先輩Tさんは、Mさんについて次のように話しています。

「うちの会社はIT企業ということもあり、技術は日進月歩です。エンジニアとしてベテランだから最先端の技術に通じているというわけではありません。

また、私のようにバブル期に大量に入社した定年間近の50代後半が沢山いる一方で、Mさんのようにチームリーダーを担う30代が少ない。当然年功序列ではない組織が多くなり、20代半ばまでのZ世代は増えつつあるので教える負荷も大きく、管理職になりたがらない人も多いんです。

だから、Mさんのように求められる役割から逃げず、前向きに取り組む人は応援したいんです。何かと頼られると嬉しいですし、私が経験してきたことで、役立つことなら何でも伝えておきたいと考えているんです」(Tさん)

   最後に、Mさんのコメントです。

「先輩たちのおかげで、私はとても良好な職場環境で働き成長できて本当に幸運です。だから、これからはメンバーにとって働きがいのある環境を、自分がつくっていく番だと考えています。リモートワークも多く、働き方改革で余裕のない現状ですが、そのなかでも、後輩たちにチームで働く楽しさを伝えていきたいと思います」(Mさん)

   職場の人間関係は、難しい場合が多いもの。Mさんが言うように、幸運なケースなのかもしれません。

   しかし、良好な人間関係をMさん自らが作り出している側面も大きいはず。あなたも、仕事と後輩を大切に思う先輩に出会い、心を動かされた経験があるのではないでしょうか。

   そんな「先輩力」は、順送りに受け継がれていくものでしょう。

   私たち一人ひとりが、チームで働く楽しさを次世代に伝えていきたいものです。

(紹介するエピソードは実際にあったものですが、プライバシー等に配慮し一部変更を加えています。)



【筆者プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお):株式会社FeelWorks代表取締役。青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授。人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業のFeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。
近著に、『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)、『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)、『Z世代の早期離職は上司力で激減できる!』(FeelWorks、2024年4月)など。

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