中小企業の賃上げ3.62%、大企業5.58%...「格差鮮明」とメディア冷ややか 日本商工会議所「頑張った。力強い数字」

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   賃上げが中小企業にまで広がるか、注目が集まるなか、日本商工会議所は2024年6月5日、「中小企業の2024年春闘結果」を発表した。

   正社員の月給(基本給)の平均賃上げ率は3.62%と、日本経済団体連合会(経団連)が5月に発表した大企業の賃上げ率5.58%に比べると、大きく差が出たかたちだ。

   今回の調査結果をどうみるか。担当者に聞いた。

  • 賃金はアップしたが…
    賃金はアップしたが…
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業績がよくない「防衛的な賃上げ」が6割

   日本商工会議所の調査は2024年4月から5月にかけて、全国の会員企業1979社から回答を得た。全体で正社員の月給賃上げ率は3.62%(賃上げ額9662円)で、従業員20人以下の企業に絞ると、3.34%(8801円)だった。

   一方、パート・アルバイトの賃上げ率は3.43%(時給37.6円)。従業員20人以下の企業に絞ると、3.88%(時給43.3円)と、むしろ賃上げ率は正社員より高い。正社員の賃上げが難しいため、非正規社員の待遇を改善して人手を確保しようとしたとみられる。

   今年度に賃上げを実施した(予定を含む)企業は74.3%。ただし、業績改善を伴う「前向きな賃上げ」ではなく、業績改善は見られないが人手確保のために行う「防衛的な賃上げ」の企業が59.1%を占めた。従業員20人以下の企業では、「防衛的な賃上げ」が64.1%に達した。

   【図表】は、業種ごとの「前向きな賃上げ」と「防衛的な賃上げ」の割合のグラフだ。

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(図表)「前向きな賃上げ」と「防衛的賃上げ」の業種別割合(日本商工会議所作成)

   「前向きな賃上げ」が半数以上なのは「情報通信・情報サービス業」「宿泊・飲食業」など。逆に、「運輸業」では「防衛的な賃上げ」が7割を超えており、業種によって厳しさの落差がみられる。

「非常にいい数字だ、中小企業が一生懸命頑張った結果」

   J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なった日本商工会議所産業政策第二部の担当者に話を聞いた。

――メディアの中には、「大企業との格差鮮明に」(6月6日付朝日新聞)などと、冷ややかに報道するところが多いですが、ズバリ、今回の結果をどう評価しますか。

担当者 私は非常にいい数字だ、中小企業が一生懸命頑張った結果だと誇らしく思っています。

たしかに経団連傘下の大企業(5.58%)や、労働組合の中央組織である連合が発表した組合員300人未満の中小企業(4.45%)に比べれば、低い数字です。しかし、私たちが今回調査対象にした中小企業は、従業員が20人以下の会社が半数以上含まれます。

もちろん、経団連傘下の大企業や、連合傘下の中小企業のように労働組合がある会社は少ないです。労使交渉どころか、おそらく経営者と従業員との間で、賃金の話し合いさえほとんど行われなかったでしょう。それでも、前年比3.62%という数字は胸を張れる、力強い数字だと自負しています。

社会全体で、中小企業のバックアップを

――しかし、「防衛的な賃上げ」の企業が全体で6割近くを占めていますね。従業員が20人以下の企業では、64%に達しています。

担当者 「防衛的な賃上げ」は毎年6割か7割くらいいます。中小企業の宿命のようなものです。ただ、今年度賃上げをする中小企業が74%も出たことを高く評価してほしい。

今年1月に傘下の中小企業に賃上げ予定を聞いた時点では、61%だったのです。それが、「何とか賃上げをして、人材を確保しなくては」と努力してここまで盛り上げて、この数字に結び付いたと思います。

――今後の課題はなんでしょうか。

担当者 この賃上げを持続的なものにすることです。経済の好循環を目指して、政府、日本商工会議所、そして社会全体で中小企業を支援して、生産性があがるように取り組んでいくことが必要です。

特に、中小企業にとってコスト増が大きな負担になっていますから、価格に転嫁しやすい環境づくりが大切だと考えています。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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