東京の名所となった東京スカイツリーは2012年5月に開業、2024年5月には12周年を迎えた。
2023年9月末までに来訪者の総数は4550万人、東京の新名所として定着した。そのタワーはどうやって建てられたか、技術的な工夫、アイディアを当時の現場責任者に聞いた貴重な証言、記録が残っている。
J-CASTニュース内で過去に連載した「J-CASTスカイツリーウォッチ」のうち、スカイツリー建設に携わる人々にプロジェクトの舞台裏を聞く連載企画を再掲載します。
(註)インタビューした方々の年齢、肩書きは、開業当時のままを掲載させていただきます。
【東京スカイツリー建設の技術】第6回:飯場は今は昔、作業員全員が通勤
現在、東京スカイツリー建設に携わる監督や作業員たちは約700人。全員が建設現場に通勤して来る。昔のように、現場に宿泊用の飯場はない。
これだけ大人数で、さまざまな職種の人たちの健康管理は、建設を順調に進める上でも重要なことだ。
事務所には血圧測定器とともに、アルコール測定器が備えてある。それぞれ自分の標準血圧より高いか低いかを自分で管理する仕組みになっている。
所属会社の上司や職長がチェックするのではなく、あくまでも自己管理させている。未知の高さでの作業を安全に進めるためにも、朝まで残るような深酒は慎むように気をつけさせている。安全管理は、その大切さを作業員が自分自身で意識し、実行することが大切だからだ。
午前7時45分に朝礼が始まる。このとき、諸々の注意事項を安全当番が伝える。作業開始は午前8時。
昼の弁当は現場の楽しみの一つである。家から弁当を持って来る者もいるが、現場ではデリバリーの弁当を食べる者が多い。人気メニューは焼肉やとんかつ、カレーなど。
弁当の良い点は、すぐに食べられること。食べ終わったら、軽く昼寝をして、午後の作業に備える。昼食後に椅子でこっくりしている様子は、微笑ましい。日常の作業ではこのようなことがつつがなく進んでいる。作業は概ね午後5時頃に終了する。
東京スカイツリーがこれほど注目されるとは、建設当初には考えもしなかった。注目を浴びることは誇りである一方、責任も感じる。皆、家族にも早く登らせたいと思っているだろうが、これは難しそうだ。
この人気の高さだと、完成直後から大勢の人が訪れ、混雑することが予想される。我々関係者の家族がゆっくりと見物できるのは、混雑がおさまってからになるだろう。家族は残念だろうが、先ずはスカイツリーを無事に引き渡すのが使命である。
スカイツリーを建てる (あとがき)モノをつくる魅力を記録しました
東京スカイツリーは2012年5月に開業しました。東京タワーに代わる電波塔です。
日本最高のタワーとして内外の見学者を集める観光地になっていますが、完成前にも見物人が押し寄せる人気スポットでした。週末にはカメラを持った人たちが集まり、付近の飲食店は大賑わいでした。
タワーを背景に写真を撮る、頭上のクレーンの動きを目で追う、工事車が現場に入るのを覗き込む。工事説明の看板をじっくり読む。どの人の表情も好奇心であふれていました。そうです、モノを作る、その魅力を楽しんでいたのです。
来るたびにタワーが伸び、成長する。それをカメラで記録する人も多かったようです。
この企画は、モノを作る魅力を記録、あのときの気分をずっと残しておこうと編集したものです。
J-CASTニュースに建設に携わった人のインタビューを連載しました。
モノを作る魅力が語られています。この気分を完成後にも忘れてほしくない。他の出版物にもレポートした記事も含めて編集しました。
タワーを見学した人、これから出かける人、子どもたちにも読んでほしいと思います。
事業主体の東武鉄道、設計に携わった日建設計、工事を請け負った大林組。それぞれのご協力によってこの書籍は完成しています。お礼を申し上げます。
株式会社ジェイ・キャスト 蜷川真夫