スマホで映画館の会員登録をしようと、「スタート」ボタンをクリックしたら、意図せず海外事業者とサブスク契約、クレジットカードからお金が引き出されていた――。
こんな新手口の詐欺が急増しているため、国民生活センターは2024年5月29日、「その『スタート』ボタン、実は海外事業者の広告かも!」と警鐘を鳴らす報告書を発表した。
どんな手口なのか。防ぐ方法はなにか。調査担当者に聞いた。
「解約しないと料金発生」と脅しながら、連絡先の記載ナシ
国民生活センターには、海外事業者との消費者トラブルの相談を専門に扱う越境消費者センター(CCJ)がある。そこに、2024年4月中に寄せられた約600件のうち約4割(約240件)が、これまでなかった新手の同じ手口だったため、急きょ注意喚起の報告を発表した。
代表的な事例はこうだ。
【事例1】
子どもからオンラインストレージサービス(インターネット上で、写真などを保存・共有するサービス)で写真を送ってほしいと言われ、サイトを開いた。手続を進めるため、表示された「スタートボタン」をクリック、利用登録のためにクレジットカード情報などを入力した。
その後、このサイトと異なる海外サイトを運営していると思われる事業者から登録完了メールが届き、入力先を間違えたことに気付いた。メールには、申込みから5日以内に解約手続をしないと料金が発生すると記載されているが、連絡先などの記載がなく、解約手続ができない。
クレジットカードは利用停止にしたが、サイトの解約方法を知りたい。(2024年4月・50歳代女性)
【事例2】
映画館の会員カードを更新するため、映画館のサイトに入ると、「スタート」ボタンが出てきたのでクリックした。遷移した画面にメールアドレスとクレジットカード情報を入力すると、「5日間の無料期間後、月額約7500円かかる」と表示された。映画館とは別のサイトに登録してしまったようだ。
海外事業者と思われるサイトのログイン画面が表示されたが、ログインもできず、事業者のメールアドレス等の連絡先もわからない。クレジットカード会社に連絡し、クレジットカードの停止と再発行の手続をしたが、そのほかにすべきことはあるか。(2024年2月・40歳代女性)
このように、間違って広告の「スタート」ボタンをクリックして気づかないケースが多い。なぜなら、有料のサブスク契約である旨を示す文章の文字が非常に小さかったり、記載画面も下方にスクロールしないと見えなかったりするからだ。事業者が「最終確認画面」を設けていない可能性もある。
国民生活センターでは、サイトのすぐ下に「怪しい広告」があり、紛らわしい「スタート」ボタンをクリックしないよう注意するイラストを公開した【図表】。「スタート」ボタンの上に、「広告」であることを示す「×」印があるが、非常に小さく、なかなか気づきにくい。